M.IZRY−I'm little cat.

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7/7/2025, 12:27:48 PM

願い事

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例えば、この物語がフィクションだと。
誰かの創作物だと。

そう思うと気が楽になってしまう。
何度目かのボツ案で、この物語は途中で終わる。
そうしたら、私は子供のままで。

未だに燻り続ける片想い。
まだ手を付けていない課題。
借りたままのハンカチ。
週末の遊ぶ約束。
消し忘れた部屋の電気。
目の前に転がる血のついた包丁。

殆どの事が私が悪くても、逃げられるなら。
責任から逃げられるなら。

私はこの短冊に願いを込める。


神様、このセカイはボツにしてください。

7/6/2025, 11:21:09 AM

空恋

──────
結局私は、空を見上げることはなかった。
前を、その足元を、見ていた。

見慣れなかった泥の中に星を見た。

私の空は、上にはなかった。
偽りに映った星空が好きです。

瓦礫に埋もれた小さな花も、私を慰めた。
上から降り注ぐ冷たい涙は、心を冷やした。

この心は、報われることなど無いのだろう。
都合よく勇者が現れることは無いのだろう。

それでもまだ、今はまだ、

俯いたままに、赤い空を想わせて。

5/9/2025, 1:49:50 AM

届かない…
──────

「うん……」

 ぐうっと背伸びをして、本棚の頂点に居る御猫様と鼠の玩具を目指す。背の無い私には、到底届きはしなさそうだった。
 御猫様は悠々と毛繕いし始めた。嗚呼、そんな場所で毛繕いなどされたら御身体を壊しますよ……

「御猫様、どうか降りてきてください……あわよくば、お近くにある其処の鼠も持って……」

 にゃあ、とひと鳴きすると、尻尾でこちらに埃を被せてくる。続いて鼠が頭に落ちてきた。ぺしゃりと柔らかい感触が頭にあたった。

「ひい、ち、血が……!」

 得意げに鳴いた御猫様は、私の頭を狙って飛び降りた。軽々と床に着地すると、身なりを整え、大旦那様のお膝へと飛び乗った。

「御猫様、家の手伝いを虐めてやるな。あれは鈍臭いが良い奴なのだよ」

 大旦那様……それは褒めていらっしゃるのですか?

「……あ、鼠の玩具がまだ上に」

 どうやら御猫様のきまぐれは、私を助けてはくれないようだった。

2/22/2025, 10:33:57 AM

君と見た虹

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さめざめと、淋しげな雨の音。
さんさんと、楽しげな光の音。

濡れた肌をそっと、君が撫でる。
温かいその指先で涙を拭う。

さんさんと、君との間に虹が架かる。
さめざめと、暗い雲が晴れるように。

乾いた心にしとりと一粒、雫が落ちる。
貴女の言葉が心地よい。

覚めた頃には、君と見た虹が架かっていますように。

2/21/2025, 10:33:15 AM

夜空を駆ける

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トン、トン、トン、と夜空を駆ける流れもの。
藍色の衣を翻し、輝く星を瞳に抱いて。
今日も誰かの願い事を集めていく。

集めた願いを月まで運ぶ。
ひゅう、ひゅるりら、風にのる。
願いを叶えるお手伝い。

叶わぬ願い、夜空を駆けるあの星とともに。

足音響く、夜空のきらめき。
トン、トン、トン、と。

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