M.IZRY−I'm little cat.

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12/4/2024, 12:31:58 PM

夢と現実


ある日、世界がひっくり返った。
地面は空に、空は地面に。
水は宙に浮き植物は逆さまに生える。
それでも、自分の足は大地に着いたまま。
目の前には大ぶりな杖を持った小さい少女。
少女が何か呟いた。

────目が、醒めた。

周りは水に囲まれている。
目の前には大きな獣。
その爪はヒビ割れている。
その赤い眼光は今にもこちらを射殺しそうだった。

11/30/2024, 11:13:53 AM

泣かないで


轟々と燃え盛る黒い炎。
熱くはない、冷えていく。
吐いた息が白く変わり溶けていく。
炎の中にポツリと立っている。
黒く煤けたタキシードがじわじわと朱に染まる。
同じように煤けた顔に黒い涙がさらに顔を汚していく。
涙を拭おうともしない。
唯一汚れていない手で一対の指輪を撫でている。
一つを二つに、二つは三つに。

消えることのない罪の炎。
けれど決して悪い事だけでは無かったと。
足元に蹲る二つの亡骸と、一匹の青い猫。
自分一人がその罪を背負えば、愛する彼らを護れる。

ふわりと、薄紫の風が炎を縮めた。
淡い青色が黒い涙を拭い、去った。
白い光が凍える寒さを取り、去った。
黒い涙に隠された赤い目が驚きと光に満ちた。
嘗ての二人が見えた気がした。

透明な涙が煤けた顔に道を創った。
一瞬、ペルシャ猫が足元で一つ鳴いた。


「やっぱり、笑顔が似合うね。」

11/27/2024, 10:46:03 AM

愛情


それは、意志あるものの象徴ではないだろうか。
それは、考える者の特権ではないだろうか。
ただ無作為に他を愛することなど到底できまい。
人間は特に。
縁、運命、番、さまざまな愛の象徴の言葉が出来た。
感情という一つの大きな括りが出来た。

愛が理解できないと言うのならば、"行きつけの店"を作ってみると良いよ。
なんでも良いし、どこでも良い。
それか、"暇な時にふと読む本"でも"手持ち無沙汰な時につい回すペン"。あとは……"暇さえあれば鏡で見てしまう自分"?

──まあでも、愛着なんて言葉もあるし、自己愛だと言う言葉もある。
人は、つい何かしらを愛してしまうらしいからね。

11/26/2024, 10:17:53 AM

微熱


いつからだったか、目で追いかけてしまうようになった。
可憐で、美しい。天使のような彼に、恋をした。

朝、何気なく挨拶をかけられる程度の関係。
ただのクラスメイト。
授業中にスマホを出して、トークアプリを開いているのを知っている。目元が、やんわりと弧を描いたのを知っている。体育のときはたまにズル休みすることを知っている。

それでも、彼の好きな食べ物も、趣味も、好きな人も、何も知らない。
柔らかな声が一層柔らかになる瞬間を、私は知らない。

けど、けれども、だとしても。
気持ちだけが、どんどんと募っていく。
寝たふりをして、放課後の彼の談笑に耳を傾ける。
ずっと聞いていたい。

それでも、これは、この恋は、許されない。

微かな熱を孕んだ彼の声がスマホ越しに誰かに伝わった。

11/14/2024, 12:08:12 PM

秋風


 さめざめと、風が泣いています。
 きっと、夏の終わりがさみしいのでしょう。

「おはよ、アキカゼくん」
「ナツキさんおはよ、あれ、髪切った?」
「切ってない。けど、結んだだけ」
「えー! 結んでたほうがかわいいよ。ずっとそのままでいてほしい」
「なにそれ」

 だんだんと肌寒くなってきましたね。
 冬が近いのでしょうか。

「ナツキさん転校しちゃったね」
「うん……フユネは、行かないよね」
「当たり前じゃない、あんたをおいていけないわよ」
「へへ、そっか」

 月が丸く、輝いていますね。
 やはりもうすぐ、冬がやってくるようです。

「アキカゼ、ごめんね。でも、何も知らないほうが幸せなことってあるでしょ?」
「うーん、でも、悪いことしたなぁ」
「大丈夫よ、ハルキくん。これは……そう、アキカゼのためだから。悪い事じゃないわ」
「でもさ、まだ"秋"は終わらないはずでしょ? なんでアキカゼくん"還っちゃった"の?」
「……わからない」

冬が終わって、春が来る。
最近は時間の流れが速いです。

「フユネちゃん? フユネちゃんも"還っちゃう"の? ……さみしくなっちゃうな」
「うん、ごめんねハルキくん。ナツキさんにも、また言っといてね。"秋風の夢を叶えてあげて"って」
「……うん。じゃ、また"来年"」

春夏秋冬一回り。
たとえ概念だとしても、心を持たせたくなるのが私の性。

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