届かない…
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「うん……」
ぐうっと背伸びをして、本棚の頂点に居る御猫様と鼠の玩具を目指す。背の無い私には、到底届きはしなさそうだった。
御猫様は悠々と毛繕いし始めた。嗚呼、そんな場所で毛繕いなどされたら御身体を壊しますよ……
「御猫様、どうか降りてきてください……あわよくば、お近くにある其処の鼠も持って……」
にゃあ、とひと鳴きすると、尻尾でこちらに埃を被せてくる。続いて鼠が頭に落ちてきた。ぺしゃりと柔らかい感触が頭にあたった。
「ひい、ち、血が……!」
得意げに鳴いた御猫様は、私の頭を狙って飛び降りた。軽々と床に着地すると、身なりを整え、大旦那様のお膝へと飛び乗った。
「御猫様、家の手伝いを虐めてやるな。あれは鈍臭いが良い奴なのだよ」
大旦那様……それは褒めていらっしゃるのですか?
「……あ、鼠の玩具がまだ上に」
どうやら御猫様のきまぐれは、私を助けてはくれないようだった。
5/9/2025, 1:49:50 AM