病みたい、病めない、病みたい
いっそのこと病んでしまえたら楽なのに
けど病んだら病んだで辛いんだろうなぁ
気持ち悪いときに、吐きたいのとよく似ている
気持ち悪いから吐きたいけど、吐きたくない
胃液の味は不味いから
お腹が空いて、しまうから
吐く前に食べたごはんが美味しかったから
戻したあとの爽快感は一瞬で
あとはなんとも言われる虚無感に襲われる
あ、考えてみれば本当によく似ている
どっちもやだなぁ
仰向けになってスマホを見ながら考える
画面には推しが映っていて、すごく嬉しいはずなのに
何故かもやもやしているの
動かなきゃ
動いていろいろしなくっちゃ
掃除をして、洗濯をして
あと、衣替えもしなくっちゃ
やらなきゃいけないことが沢山あるのに
体はなかなか動かない
「ーつらぁい」
こんな思いするくらいなら、
失くなってしまえ
なんて、映画ならば言うでしょう
分かるよ
苦しいものね、片想いって
辛いよね
だってあの人が私のことが好きかどうか、
さっぱりわからないんだもの
けれど、それでも
私があの人のことを好きってことは間違いない
だって苦しいくらいに、胸がどきどきするのだから
嫉妬した時には、潰れそうなくらい、痛いんだから
どっちにしても辛いなんて、おかしいね
心が苦しくて、心臓が痛くて、辛くて
貴方を見かけるたび、考えるたび、叫んでいるの
「痛い、痛い」
って
文字通り、心の底から叫んでいるの
笑いながら、幸せそうに、
「痛い、痛い」
とね
ベルの音が鳴る
厳かなその音は、家々を駆け巡り、広大な山を抜け、
またその向こうへと響いていった
やっと、結婚できるね
長い間温められてきた私の想い
片想い
それがようやく、実るのだ
嬉しくてたまらない
ずっとずっと、好きだった
小さな頃からずっと、好きだった
それは今も変わらない
『大好き。』
それなのに、ねぇ?
やっと実ったのに夫婦別居なんて、
果てや新婦は棺桶の中なんて、そんなの酷いと思わない?
ずっと一緒に居たいのに
生きてるうちも、死んでからも、ずっと君を愛してるよ
だから、一緒に居てくれるよね?
始まりは終わりの始まり、なんて言うけれど
私たち死者には関係ない
だって死ぬことはないんですもの
けれど生者は違うわね
夏の真っ盛り
みんなで水風船を投げあったこと
びちゃびちゃに濡れて
ふたりで、顔を見合わせながら笑ったこと
その後食べたチューインガムが
妙に美味しかったこと
もうずっと昔の筈なのに
今でもはっきりと思い出せる
そうして、昔の自分を羨む
良いな、って
今では
私も彼女も、一緒に遊んだあの子達だって
思春期で
だからあんなふうには遊べない
あんなにも純粋に
楽しくは、遊べない
時々思い出す思い出は
全部痛々しくて、輝かしい
あぁ、忘れたい
けど、忘れることができない
こんなふうに考えていることも
あとで忘れたい思い出になるのかな
なったら、嬉しい
早朝、カーテンの間から一筋の光が溢れる
緩やかな風が辺りに吹き抜けた
腕を伸ばして、伸びをする
うーん、とくぐもった声が漏れた
ふと隣を見ると、あなたがいる
大好きなあなたが、すやすやと隣で寝ている
かわいいなぁ
白い頬が薄紅色に色付いて、美味しそう
長い髪がベッドの上に広がっている
呼吸をするたび胸が上下して、
あぁ、生きているんだなぁ
って思える
毎朝、こんな小さなことで感動しているなんて
私が朝が苦手だと思っているあなたは
知らないだろうね
「好きだよ。」
寝ているあなたが起きないように、そっと呟く
柔らかい光が、ふたりを包み込んだ