私の部屋は、基本的に静かだ
適度に掃除もしてあるし、必要なものしか置いてない
時々、生活音はするがそれ以外は呼吸の音しか聴こえない
静かな部屋
…でも最近、賑やかな音もするようになってきた
彼が来るようになってから
無口な私とは反対で、とてもおしゃべりな彼は
いつも楽しそうに話す
それは、好きな漫才師のネタが凄い!
だとか
テストが難しい
とか
彼の話はいつも興味深いし、面白い
ガタッ
あ、帰ってきた
可愛い可愛い甥っ子が
「ねぇ、今日はどんな事があったの?」
「あのね、ー」
私の彼氏は犬
犬系男子、みたいなものじゃなくて本物の犬
正しく、犬
今も、茶色いふわふわを、
これはなんだ?
とばかりに、グルグル追いかけて回ってる
自分のしっぽなのにね
午後6時を知らせるチャイムがなる
そろそろ帰らなければ
けれど、その前に
「ねぇ、こっちむいて。」
ちゅ
彼の黒く、湿った鼻に触れるだけのキスを贈った
「また明日」
雨なんて、嫌い
君とあの子がおんなじ傘に入って笑い合うのが、
目に入ってしまうから
「いいなぁ。」
君が、好きだった
無邪気な笑顔が好きだった
明るい笑い声が好きだった
…私も、相合い傘して笑い合ってみたかった
それはもう、叶わない夢
あの子と君は、両思いで
かわいいかわいいカップルだ
私が間に挟まるなんて、できない
通り雨が降る
しとしと、と
少ししたら止んで、彼と彼女は笑うのだ
「急に降ってびっくりしたね。」
って
紅い紅葉が
一枚、二枚、落ちてくる
道の至るところに落ちていて
まるで、赤い絨毯みたい
紅色の美しい葉を踏みたくなくて、少しつま先立ちで歩く
それでも、踏んでしまう
仕方ないことだ
だって、所狭しと落ちているのだから
意味がないことなのだ
急に哀しくなってくる
もし、すれ違いなどなかったら
もし、君と別れることがなかったのなら
君は私に
「なにしてんの」
なんて聞きながら、いっしょにやってくれたのだろうか
いっしょに肩を並べながら歩いてくれただろうか
今更思っても意味がないとは知っているけど
それでも君に会いたい
会ってふたりで
この紅い、美しいレッド.カーペットを
笑いながら歩きたい
恋が色付き、枯れていった
廊下側
右隣には誰もいなくて
何も貼っていない掲示板だけがぽつん、とある
くじ引きで決まった席だもの
異論はない
ただ、少し残念に思うだけ
運がなかったなぁ…って
本当は、君の隣が良かった
にこにこと笑う君の隣で微笑んでいたかった
会えるのはあと3日
過ぎたらもう、一生会えないかもしれない
あぁ、それはいや、それだけはいや、絶対に
初めて私のことをわかってくれた人
怖がらずにいてくれた人
認めてくれた人
例えそれが人間ではなくても、私にとっては大切なヒト
窓側の席
左隣には、誰もいないはずの席
そこに座って、ゆるりと微笑む
窓の外では君が慌てたようにこちらを見つめている
ブシッ
動脈から、どんどんと血が流れて
一緒に私の命も流れてる
四階の窓の外から覗く君は幽霊
そして、今から私も幽霊になる
ずぅっといっしょ