午後二時。一番鮮やかな光が部屋に踏み込み、脱ぎ捨てられた部屋着や、ソファのクッションを白く飛ばしていた。
集中しすぎた。
頭のどこか奥の方が痺れるような感じがする。ぼーっとするのに、冴えている。
ふと周囲に意識を戻すと、視界の端に彼が置いたであろうグラスが、水滴を纏って静かに佇んでいるのが写った。
隣の椅子は空席だった。
ついさっきまで、彼はそこにいて、一応作業の邪魔をしないように静かにしていたはずだ。
溶けた氷で薄くなった麦茶はひどくぬるくて、喉が詰まるような感覚がした。
多分、オレが顔を上げるのを待っていた。ペンを置いて、ふっと息を吐くその瞬間を、静かに待っていたのだ。その優しさを、風景の一部のように受け流し、自分の世界に閉じこもってしまった。
空っぽの椅子に落ちる影が、取り残された心残りのように長く伸びている。
明るすぎる午後の光の中で、ただ薄い麦茶を飲み干した。
後悔
窓の隙間から入り込んだ朝の空気が、微睡んだ部屋の澱みをゆっくりとかき混ぜていく。
カーテンの端が力なく揺れる音を聞きながら、重い目蓋を持ち上げた。視界に映る昨日を想起させるシーツには、朝の湿度を含んだ重くひんやりした空気が染み込んでいた。そこには、騒がしい片割れの体温は残っていなかった。
仰向けになり、手足を広げてみても感触はどこまでも涼やかだ。まるで最初からいなかったように、痕跡はどこにもない。
重い布団を鼻先まで引き上げ、微かに残るかもしれない彼の残り香を探す。けれど、鼻腔をくすぐるのは冷ややかな朝露の匂いばかりで、思考はさらに深く、微睡みの淵へと沈んでいく。
とろけた意識は、無機質な金属音に浮上した。重い目蓋を、今度は意志を持って持ち上げた。朝の明るい光が廊下から一筋、部屋の床を切り裂くように差し込む。
「起きてたの?」
シーツの冷たさに浸食されていた静謐な時間が終わってしまったことを、ほんの少しだけ残念に思った。
「花に水やりに行ってたんだ。天気よかったから」
彼の纏う外の空気は、この部屋に入り込むものよりずっとあたたかい匂いがした。
「……おいていくなよ」
「え」
なんとなく癪だっただけ。べつに、それだけで。
ごめんね、と笑って撫ぜる指先は、朝露に濡れて少しだけ冷たかった。
風に身をまかせ