ふゆ

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窓の隙間から入り込んだ朝の空気が、微睡んだ部屋の澱みをゆっくりとかき混ぜていく。
カーテンの端が力なく揺れる音を聞きながら、重い目蓋を持ち上げた。視界に映る昨日を想起させるシーツには、朝の湿度を含んだ重くひんやりした空気が染み込んでいた。そこには、騒がしい片割れの体温は残っていなかった。
仰向けになり、手足を広げてみても感触はどこまでも涼やかだ。まるで最初からいなかったように、痕跡はどこにもない。
重い布団を鼻先まで引き上げ、微かに残るかもしれない彼の残り香を探す。けれど、鼻腔をくすぐるのは冷ややかな朝露の匂いばかりで、思考はさらに深く、微睡みの淵へと沈んでいく。

とろけた意識は、無機質な金属音に浮上した。重い目蓋を、今度は意志を持って持ち上げた。朝の明るい光が廊下から一筋、部屋の床を切り裂くように差し込む。

「起きてたの?」

シーツの冷たさに浸食されていた静謐な時間が終わってしまったことを、ほんの少しだけ残念に思った。


「花に水やりに行ってたんだ。天気よかったから」


彼の纏う外の空気は、この部屋に入り込むものよりずっとあたたかい匂いがした。

「……おいていくなよ」

「え」

なんとなく癪だっただけ。べつに、それだけで。
ごめんね、と笑って撫ぜる指先は、朝露に濡れて少しだけ冷たかった。



風に身をまかせ

5/14/2026, 1:01:29 PM