ここではないどこか
ココではないドコかに興味はない
言うなればココにしか興味はない
ココが私の、安定の居場所であり
守るべき所
自宅の自室の自分の硬いベッドで
寝転がりながら、片肘つきながら
再認識する
君と最後に会った日
私が高校2年生のとき、小さな黒猫
が数日だけ姿を見せたことがあった。
我が家は団地の2階だったが、玄関
ドア横の階段を数段上がったところ
に、いつもちょこんと座っていた。
出掛ける時はいないのに、帰ってき
た時だけ何故か見かけた。
玄関を開ける度に中に入ろうとする
ので、『ごめんね。中には入れない
よ』と声をかけてドアを閉めていた。
そんなやり取りを数日繰り返してい
たある日、私の両足の間を八の字に
身体を擦り寄せてきたので、『おば
あちゃん?』と声をかけると、私を
見上げてから階段を降りていった。
少し前に亡くなったおばあちゃんだ
と思い、とても嬉しかった。
その日以来、ぱたりと見なくなった
が、あの可愛い黒猫を今でも覚えて
いる。
日常
繰り返される何気ない日々を
日常というならば、
日常とは究極の幸せだろう。
繰り返される不安定な日々を
日常というならば、
日常とはあまりに辛いものだ。
朝が来て昼を過ごし、夜を迎える。
また朝が来ることを受け入れる私は
幸せなのだろう。
相合傘
面倒くさいから一本でいいやと
娘と一つの傘にはいる。
娘が濡れないように傾けると、
『真ん中でいい』と戻される。
半分こするケーキも、大きい方
をあげようとすると、ちょうど
半分に削ぎ落として均等にする。
真ん中で同じにしたいらしい。
そんなこんなで仲良しこよし。
好きな本
16歳になる娘のお小遣いは、中学生
のころから変わらず千円だ。
超インドア派の娘は、滅多に遊びに
出掛けない。たまに遊びに行くとき
や服などの必需品は、別でお金を渡
している。
千円のお小遣いは、ほぼ好きな本代
(フィクション小説) に消える。電子
書籍や図書館で借りることはせず、
好きな本を購入して手元に置き、自
分の本棚に並べることに幸せを感じ
るそうだ。
ときどき全部で何冊あるかを数えて
は、満面の笑みをうかべている。
お小遣いの金額も、千円のままで良
いと娘が言った。何かと自分を持っ
ている娘がおもしろく、愛おしい。