君と最後に会った日
私が高校2年生のとき、小さな黒猫
が数日だけ姿を見せたことがあった。
我が家は団地の2階だったが、玄関
ドア横の階段を数段上がったところ
に、いつもちょこんと座っていた。
出掛ける時はいないのに、帰ってき
た時だけ何故か見かけた。
玄関を開ける度に中に入ろうとする
ので、『ごめんね。中には入れない
よ』と声をかけてドアを閉めていた。
そんなやり取りを数日繰り返してい
たある日、私の両足の間を八の字に
身体を擦り寄せてきたので、『おば
あちゃん?』と声をかけると、私を
見上げてから階段を降りていった。
少し前に亡くなったおばあちゃんだ
と思い、とても嬉しかった。
その日以来、ぱたりと見なくなった
が、あの可愛い黒猫を今でも覚えて
いる。
6/26/2023, 11:07:08 AM