風のいたずら
風邪引いちゃった。友達と楽しみにしてたプール行けないな。
また風邪引いちゃった。遊園地キャンセルか。
風邪…修学旅行行けないの?
僕は昔から体が弱く、すぐに熱を出していた。そのせいか楽しいイベントに全然行けてない。友達も全然いない。ああ、僕ってなんなんだ?
そんなことを思いながら部屋で勉強していた。春。窓を開けながら。
すると、風に乗って何かが飛んできた。紙…?ゴミかと思って拾ってゴミ箱に投げようと思った。でも、これは手紙のようだった。内容が気になる。どうせすてるなら見てもいいよね…。
「誰かさんへ
この手紙を拾ってくれた誰かさん。どんな食べ物が好きですか?キャラクターは?おもちゃは?
もしも答えてくれるなら、お返事を書いて飛んできた方向に手紙を飛ばして下さい。
誰かより。」
…変なの。ま、暇だしやろうかな。
「僕はエビフライが好きです。どらえもんと、トミカも大好きです。あなたはなんで手紙を書いたのですか。」
今日は風が強い。窓に紙を持っていくと吸い込まれるみたいに飛んでった。
そんなこと、忘れていたころ。また窓から手紙が入ってきた。
「私は友達はいません。友達が欲しいのです。なので手紙を書きました。」
僕となにか似てる…
それから、他愛もない話を手紙に書き綴った。手紙は一カ月に一回くらい来る。僕の初めての友達だ。何年も、何年も、風が運んでくれる手紙のやりとりは続いた。
しかし、二十歳になった冬、突然届かなくなった。寂しかった。
2年後、3通だけようやく手紙が届いたと思えば、ズタズタでほとんど読めるような状態ではなかった。唯一解読できたのは
「もう手紙は出せません。ありがとう。」
と
「私は貴方のそばにいます。」
だった。
ふと、窓を開ける。手紙の主に何があったのかわからない。そもそも何故文通できていたのかわからない。ただ手紙を窓から投げてただけなのに。
…風のいたずらかな。体を吹き抜ける風に妙な温かさを感じた。真冬なのに。
私はあまり泣かない。でも泣き虫だ。
なぜなら、時々透明な涙が出ることがあるから。
Bくんに虐められたとき、涙が出そうになったけど、泣いた方が負けだから泣かなかった。いつも目元には透明な涙がついてて、お母さんはそれに気づいていたらしい。学校でのこととか、いっぱい聞いてきた。そんなときは透明な涙を拭いて、「楽しいよ!」と答えるんだ。
いつしか、標的が友達のCちゃんへ変わったとき、私はいじめっ子グループの中にいた。でも、私と同じ思いをしてほしくなくて、直接的なことは避けていた。なんなら、消しゴムを隠して私の消しゴムを筆箱に入れていたり、悪口を言う流れになりそうだったらそれとなくトイレに連れて行ったりしていた。それが私の精いっぱいだった。
Cちゃんが目頭を濡らして「本当はわかってるよ。私、大丈夫だから。」と言ってくれたとき、なんでか、なんでかわからないけど透明な涙が溢れた。なんでかわからないけど。
高校生になって、いじめがなくなった。部活に勤しんだ。1、2年生のときの大会は負けてしまって、透明な涙を毎年流していた。今年こそ勝つぞ。
頑張って、頑張って、頑張って。でもちっとも上手くならなかった。ほんとの涙か汗かわからない。全く視界が開けなかったとき、Cちゃんが言った。「大丈夫、頑張ってるもの。そのうち上手くなるよ。本当はわかってるよ。人一倍努力してること。」なんだか、辺りに色がついた。
3年生の大会、緊張が走る。練習したことを思い出しながら完ぺきにこなせた。なんと、優勝だ。
本当の涙を流しながら、Cちゃんと抱き合った。
そんな私はもう、大学も卒業して社会人。上司にしかられて、ミスをしてしまって透明な涙が出ることもあるけど、本当の涙は今お腹の中にいるこの子の為に溜めているところです。
秋恋
俺は秋が好きだ。あの子を思い出すから…
秋ちゃん。なんと10月生まれで好きな食べ物は焼き芋。秋そのものの精霊みたいな感じ。
あの秋はとても濃い秋だった。俺の初恋だったから。
秋ちゃんの顔は別に特段可愛いわけじゃないんだけど、笑顔が素敵で話が面白くて。好きになっちゃうのも無理はないね。
そのまま告白にいったんだ。そしたら、「えっ。ちょっと考えさせて。」
もう折れた。死んでくる。って脳内の声は言ってた。現実の俺の声はあっ、えっ、うん。とかだったと思う。
だいぶ長い事悩んで「いいよ!」って言ってくれた。俺は下げてから上げるという女の子のトラップに引っかかったと思った。「でも、私と付き合ったら幻滅しちゃうかも…いい?」勿論!!
それからは一緒に焼き芋焼いて食べたり、一緒に課題したり、一緒にカラオケ行ったり。楽しかったな。
冬の足音がもう背後まで迫ったころ。秋ちゃんがこういった。「ねぇ。私達、別れよう?」
おかしいな。周りの音が聞こえない。目の前がまっくら。手汗がだろだろ。
なんで?と喉を絞って絞って声を出してみた。
「えーと。付き合う前から決まってたことなんだけど、私、引っ越すんだ。☓☓県まで。」
息の吸い方も、舌の置き場所も、目の動かし方もわからない。
そんなの嫌だ!他県に行っても俺は…!俺は…!「仕方ないなぁ。じゃあ、二十歳の秋になったら、迎えに来て。約束ね?て、忘れてるだろうけどw」
忘れるわけないじゃん。
あれから5年。俺は大きくなった。今夏だ。残暑に苦しめられてるけど全く暑くない。
ああ、早く秋、来ないかな。秋来い!!
「待ってたよ。」
胸の鼓動
ハアハア…
心臓がバクバク。足がガクガク。でも、まだまだ!全員を捕まえるまで終われない!あとは美沙ちゃんだけ!
「あははー!」「まっ、まてー!!」
「捕まるもんですか!」
ドキドキ。テスト返しの時間だ。このテストで点が高かった方がお菓子おごり。負けられない。
また1人、また1人呼ばれてついに僕の番!
「よし!僕の勝ちー♪」「えー、負けちゃったぁ。」
うぅ…緊張で胸が…手汗が…
「大丈夫だよ!あんたならできる!!!」
サッカーの試合開始。必死に、必死に美沙の言葉を思い出して戦った。
なんと優勝!
「さすが!できたじゃん!」
グッ。胸のドキドキが。収まらない。
「ちょ、美沙が僕の番号探して!」
「大丈夫。見てみ?」
125、130…162!163!!
「やった!合格だ!」
今までに無いほど胸がドキドキ。音がうるさい。そわそわ。
「話って?」
「あっ、あのっ、あっ」
喉まで来てるのにつっかえる。だがチャンスは今しかない!
「好きです!!付き合ってください!」
頬を赤く染める美咲ちゃん。
「…!待ってたよ、その言葉。」
「えっ、それって…!」
大学受験も、面接も、胸の鼓動がうるさかった。だけど、美咲の「大丈夫!できるよ!」の一言で乗り越えて来た。
「ねえ、私にね…」「なに?」「赤ちゃんがやってきたかもしれない。」「....!!」
胸の鼓動が速くなる。でもうるさくなんてなかった。
新たな胸の鼓動が始まった。僕と、美咲が半分半分、一つの心臓になって、小さな心臓を鼓動させた。
ツー。ツー。ツー。
美咲という、僕の心臓。今まで休みなく働いてくれてありがとう。ありがとう。
いつの間にか、ベッドにシミがあって、変な声が部屋をこだましていた。
美咲の胸の鼓動が止まっても、世界は止まらなかった。僕の胸の鼓動が止まっても、、。
向かい合わせ
僕は野良猫。突然だけど、今、恋をしてる。
あのこの名前は...シロ。赤い首輪に、雪のような真っ白な体、見ているだけでしあわせな気持ちになれるつぶらな瞳が特徴的。シロちゃんはとってもいい奴。ご飯を分けてくれたし、僕が追い払われそうになったとき、守ろうとしてくれた。そんないい奴さに惚れたんだ。
今日もシロちゃんにこっそり会いに行った。多分、シロちゃん的には僕は友達。僕の恋心なんて、全く気がついて居ないんだろうな。でも、僕の力でなんとかシロちゃんを落としてみせる!!
でも、、、。シロちゃんってなんだか変。僕が「ご機嫌いかが?」って聞くと、、
「ワフッ!ワンワン!!」って返してくるんだ。
冗談混じりに「可愛いね笑」って言うと、
「アウ〜?ワフッ。」って返してくる。意思疎通がまるでできないや。
…そういうところも可愛いかも?
最近毎日うちに猫が来るようになった。シロのご飯を盗むから必死で追い返すんだけど、すぐに戻って来る。でも、シロは猫のこと、歓迎してるみたい。私から猫を隠したり、猫に私が来るタイミングを知らせたり…強い。
でも病気とか移されたら怖いしな…家族に相談しよっと。
ネズミのプレゼントをあげたら嫌そうな顔された。
たんぽぽを渡したらにっこり。笑顔で「ハァハァ」って言うんだ。食べれない物のどこがいいんだが。
ネズミの死骸がうちに落ちていた。これ、、。あの猫がシロに渡したものっぽい。病気とか本当に怖いよー!でも、自分の取った獲物を他の動物にあげるのって、猫からしたらすごいことらしいね。
…ひとつ、家族に相談しようかな。
まっ、まずい!人間に捕まってしまった。なんてことだ。もうシロちゃんには会えないのかな?そんな、、そんなことって、、
たのむ!もう一度だけ、僕とシロを会わせてくれ!信じられない!!
…ハッ!?ここは、、建物の中?しかし、見覚えがあるようなないような、、。
、、人間が居る!警戒しないと、、。
あれ、なんかくれたぞ?茶色い、、。これ、シロちゃんも似たようなの食ってたなぁ。シロちゃんん、、。
ふと横を見たんだ。そこに、、。シロちゃん!?
ま、間違いないぞ!この息遣い、この匂い、その体!シロちゃんだ!な、なぜここに、、!?
まぁいいや。また会えて嬉しい。僕は見つめながら「好きだよ!」
シロちゃんは「ワンワン!」って言ったのさ。ここは多分、安全な場所だし、ご飯も食べても平気そう。
このまま、ずっと一緒に居れたら…ふふっ。
うちの家族として、よろしくね!クロ!二匹は顔を見合わせて、「ニャーニャー!」「ワンワン!」って言った。「また会えて嬉しいよ!」「私も!」とか言ってたのかな?本当のことは、2匹にしかわかんないや。
家にはすぐに馴染んだし、ご飯も食べてくれてよかったー!これからも仲良くね!2匹とも!