旅舟

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4/25/2024, 3:14:56 PM

詩『神代の言い伝え』
(裏テーマ・流れ星に願いを)


遥かな大昔、古代の若き島々の国を治めた予言者がいた。
偉大なる予言者はこう言った。

桜と名付けられた花が散った最初の新月の南の空に、赤く輝く大きな光の流れ星が現れる。その直後に首に赤黒いまるで星のようなアザを刻印されて、その娘はこの世界に生まれてくる。
その者は戦争で明け暮れる人類を救い、世界を平和へと導くでしょう。

私の村に伝わる神代の頃からの言い伝え。
あまりに古すぎて、実はだれも信じてなかった言い伝え。

「じいちゃん、それでなんなの?」

私はその予言通りに生まれた、らしい。首にアザもある。
だから村では大騒ぎだったらしい。
しかし、私の股間には不要な物がある。そう、男の子だったのである。村人は落胆した。
村人の中には、不要な物は切ればいいとまで言い出す始末。

結局、期待されなかったガッカリ赤ちゃんの私はお陰ですくすくと気楽に暮らしてきた。

「で、じいちゃん、成人のお祝いって私はまだ12だよ。」

古代は干支がひと回りしたら成人と言われていたらしい。
そして、言い伝えには、続きがあったらしい。

人類の救世主の赤ちゃんは、その絶大な能力のせいで命を狙われるであろう。だから神はあえて男の子の姿で生ますだろう。
しかし、心は女だから、そばにいる者はすぐに気づくだろう。
必ず秘密にして守ってあげなさい。

「えっ? 確かに私は心は女だけど。えっ? だったら私は人類の救世主なわけ?」

やめてくれー。

私は体が男で心は女で人とは違うと悩んだ昔もあったけど、悩みの方向が迷子になる。

とりあえず…、あっ、流れ星!

「普通の女の子にしてください」
私は、流れ星に願いを、そう、願いを必死に祈った。

「じいちゃん、私は流れ星に願いを言うことくらいしか出来ないんだよ、期待しちゃー駄目だよ」

じいちゃんは泣いてた。さすがに呆れて、泣いてた???

私を優しく抱きしめて耳元で「ドンマイ」とそう言った。
やっぱり呆れてたんかーい!って、まぁいいや。


話の続きは私が引き受けましょう。
私は百年後の未来から来た彼女の後継者です。
すべてを見届けた者です。

確かに、この少女?は、95歳になった頃に世界を本当に平和へと導くのです。

ずっと愚か?で惨め?な人生でしたが、彼女は言葉だけで人類の歴史を変えたのです。

すべての宗教も導くのは神ではなく、言葉なのです。

83年後が楽しみかもしれませんが、ほとんどの人が死んでいることでしょう。

ん? 私の背中に隠れてカップラーメンを食べないで下さい。我が救世主様。

睨まない。

おじいさんも、私も、本当に苦労しました。破天荒なので。

逃げなーーーい!!!
止まりなさーーーい!!!

やれやれ、救世主様。
(笑)

4/24/2024, 4:27:46 PM

詩『新たな夢』
(裏テーマ・ルール)


俺は俗に言うオレオレ詐欺師だ。
最近では振り込め詐欺かな?

俺は高校の時までサッカー選手。
県の準決勝まで行ったんだぜ。

彼女との遊ぶお金欲しさに
羽振りの良い先輩に近づいたら
どっぷりこの世界だ。

ヤバいとは思うけど金は欲しい
だから、やめられない。

スポーツでルールは絶対だ。
だが、いかに破るかの戦いでもある

レフリーの見ていない死角で
ユニホームを引っ張ったり
肘でつついて遊んだり?

今もそうだ。
警察の見えない死角で戦う。

先日、仲間がドジして
バレそうになりパニックになって
おばあちゃんを刺した。
命は助かったけど逮捕された。

そのせいで捜査が厳しくて
ほとんど廃業状態だ。

しょうがないから居酒屋でバイト。
初めて料理をやってみた。

マニュアルというルールがあり、
その通りにすればいいだけなのだ。
ゴールの歓喜はないけれど
お客さんが美味しそうな顔をすると
嬉しかった。

親方が魚のさばき方も教えてくれた。
焼鳥の串も刺すのに秘密の工夫があった。

そして料理には、
ドリブルやシュートのような、
アイデアが重要だった。
面白いと思った。

事件のほとぼりが冷めて、
元締めから商売の再開の連絡が来た。
しかし、俺は組織から抜けた。

居酒屋で、
憧れのエースストライカーになるんだ。
そしていつか、
自分のチームを作りたい。

新たな夢が出来た。

4/23/2024, 12:43:20 PM

詩『鯨幕(くじらまく)』
(裏テーマ・今日の心模様)


一日、誰とも会わない夜は
天井の木目が動きだす
そろそろと、ゆらゆらと、にょきにょきと
襲ってこぬかとにらめっこ

未来が不安で決心しても
朝陽が心にノックする
こんこんこん、どんどんどん、ガチャガチャ
やっぱり無理だとひざを抱く

こんなにあなたを愛してるのに
垣根を作って遠ざかる
すーすーと、ぴゅーぴゅーと、すきま風
何にも無かった振りをする

タータンチェックのハートの模様
いつしか汚れて真っ黒だ
しくしくと、ぽつぽつと、ぽろぽろと
鼻水、さそって決壊だ

わたしはいつでも死んでもいいの
今日の心模様は、くじら幕
ゆび鉄砲、こめかみに、そしてバキューン
死体じゃないのが…かわいそう

誰かがわたしを思っていても
いつも心模様は、くじら幕
ゆび鉄砲、こめかみに、そしてバキューン
生まれ変われたなら、いいのにね

4/22/2024, 12:43:49 PM

詩『ばけねこ、こわい?』
(裏テーマ・たとえ間違いだったとしても)


 ここはノラ猫が集まる集会所
 ずっと空き家になってる二階建て

 今日は長老が落語を聞かせる
 落語嫌いの若者も
 正座ができない年寄りも
 みんなあくびをしながら待っていた

 長くてもつれた毛並みを隠し
 藍色の着物姿で登場して
 ぼろぼろの扇子をぱちぱちさせて
 座布団に座ると
 あっという間にひっくり返る
 仰向けにバタン!

「おーぉ!、だ、だいじょぶなのか?」
 そんな声も聞こえぬかのように
 長老は座り直し、話し始める

 ときそば
 じゅげむ
 まんじゅう、こわい

 上手な子守唄のように
 全員がぐっすり眠ってしまった

 長老だけが
 あそこを間違えた、ここも失敗したと
 大反省会
 まぁ、こんな寄席はやめようかなと
 決意したころ、
 古い友人の人間が家に入って来た

 白髪頭の長老の友人は動物専門の探偵だ

 行方不明の子猫の探索のために
 こうやってときどき協力している
 報酬は大量のマタタビだ
 みんなが集まるのも、それ目当てだ

 「いたいた、ありがと、助かった」
 探偵は三毛猫の子猫の首をつかみ
 ひょいと持ち上げ出ていった

 さぁ、起こして、
 みんなでマタタビのお祭りだ!

 こっそり人間と協力して
 仲間の猫たちを騙す
 たとえ間違いだったとしても
 汚れ仕事は年寄りの仕事
 そして、誰かに引き継いでもらう
 長老はそう考えていた
 
 それから、もうひとつ
 長老には秘密にしてることがある

 私は飼い猫だったんだ
 幼い女の子のご主人様を
 かばって身代わり死んだのさ
 そしたら神様が
 その子が二十歳になるまでは
 この屋敷の中だけは
 生きてるように暮らせるように
 くてくれたのさ

 この家は昔の長老の家
 その子は引っ越した
 長老を殺した犯人が両親を殺したから

 実はずっと待っている
 長老は逃げ続ける犯人が
 いつかここに来ると思って

 そう、化け猫になって
 襲うことだけを夢見てる

 「あ~ぁ、よく眠った、終わったの?」
 一匹の猫のお兄ちゃんが起きて
 それにつられて
 つきつぎ他の猫も起き出した

 「よーし、ここにマタタビはあるぞー!」
 その声に歓声があがり
 ノラ猫たちの祭りは朝まで続いた

4/21/2024, 1:48:25 PM

詩『時速25キロ』
(裏テーマ・雫)


 暗い宇宙に飛び出せば、落ちる、落ちる、落っこちる。真っ逆さまに、ぐんぐんと、意志の無いように、情けなく。
 仲間に気づき、見渡すが、首が痛くなるばかり。しかし、無数の、何万?の、運命を感じてホッとする。ひとりじゃないって暖かい。ひとりじゃないって幸せだ。
 約2グラム、時速25キロの流れ星。水の惑星だ。
 そのスピードに慣れてゆき、飛び出たふるさと見返せば、そこには新たな弟たちが、不安そうに下を見る。震える足を少しずつ、ずらしてまえに進んでく。そして目をつむり、思い切って飛び出して、落ちてく弟たちの惑星は、キラキラと、夢見るように、光って見えた。
 人生、半ばを、過ぎたなら、下の明かりに気づくんだ。赤や黄色や青やオレンジ、あれが、東京という街か。まるで天竺(てんじく)、夢の国、願いを叶える、魔法の世界。
 僕らは、選ばれた、ソルジャーなのか、あそこで、何が、できるのだろうか、何を、すべきなのか、いや、何もできない。僕らは死ぬんだ。生きるって、一瞬だけの夢なのかな。
 その時、強い風が吹き、仲間の半分は飛ばされた。流され、漆黒の山へと、向かってく。あらがい、泣いてる子供もいたが、どうすることも、できなくて、僕も泣いて、眺めてた。
 そろそろ、落ちて、ぶつかって、僕らはきっと、死んじゃうね。
痛いのだろうか、苦しいだろうか、生き延びることは、できないのだろうか。
 その時、生きてる生物が、手を差し出して、僕らを、受け止めていた。僕らの仲間の、死体を見つめ、美味しそうに?、ほほえんだ。そして、僕らに、名前をつけた、
「ねぇ、ママ、雨って、どこから来るの?」
 僕らは、雫は、雨?らしい。
 そして、悲しい、葬儀のように、東京の街を、濡らしてく。まるで地球が泣いて、淋しがって、いるように。
 落ちて、落ちて、スピード、あげて、真っ逆さまに、落ちてゆく。
 パシャ、パシャ、パシャ。
 どうやら、僕は、アスファルト、首都高とやらに、ぶつかって、いろんなタイヤに、踏まれてる。意識が、しだいに、遠くなる。初恋の彼女を、思い出す。
 流れて、古びた、景色が見える。
 遠くの高い建物の上に、大きな看板があった。
 あの看板は、子供の頃に下をのぞいて、そして見た看板だった。女神のように美しい、女優という笑顔がこちらを見てる。
 僕の初恋だ。

 やっと会えた。
 死んでく僕はいつか、雨水から、嬉し涙の、雫になった。

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