村人ABCが世界を救うまで

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2/28/2026, 11:18:17 AM

遥か昔から交通の要所であったダンツィヒ。山間の街で3つの街道を城壁要塞でまとめ上げる。古くからの豪商が組織を立ち上げ今やどの国も手が出せない山岳の自由都市ダンツィヒと名高い。
たくさんの種族と民族が、他国の貴重な品々の売買のために集う。
「あそこまでいけばお別れだね」
同行人の狩人の女性が囁くように呟いた。
子供達3人と、偶然出会った2人旅の冒険者の合計5人は、草木の生えない小高い丘でほんの小休止をしていた。
「君たちだけを残すのも忍びないんだけど、こちらも用事があってね」
「いえ、そんな!」
「ゼアルも心配でしょ」
ミレーヌが胸の前でぶんぶんと手を振るけど、狩人の2人は会話を続ける。
「一刻も早く、土地の有力者…。そうだな、まずはあの街の人間に頼めばうまくいくかもしれん」
「そうよね。ここの地域のことは、季節の明けに、夏の嵐、秋の実りに積雪量。すべて把握していると思うし…君たちの村の惨事も商人たちによって伝わっていると思うわ」
「私たち…その。何もないのに。辺境の村人が取り次いでもらえるんでしょうか」
改めてミレーヌが戸惑いを見せた。2人の大人もおやおやと見守ってくれる。
「緊急時に、なにももないよ」
よく、頑張ったね。
ミレーヌはうつむいて、涙を今更ながらこぼし出した。側に居たヴィルは、泣き虫とからかってからいつものように肩を寄せて、カノンは誰のマネなのかよしよしと頭を撫でる。憔悴しきっていた。でもそんなことは考えていられない。
自分たちは運が良かっただけ。これからは自分たちの足で立ち上がらければならないんだ。

2/27/2026, 7:58:41 AM

黒髪の薄汚れた服装の旅人が荷物をどさりと置いた。
「そうか…」
小さな出来立ての村は平らにならされて、周囲は堀と防風林に囲まれている。すべてカノンや疎開地の人々がやったのだ。
得意ではないが魔力の残り香を調べる。
「あいつ、妙に奇妙な体内の魔力の流れを感じると思ったが、人間ではなかったと言うことか」
知らなかったという風体ではない。ギールスは薄々感づいていたのだ。第一この世界のヒトは、何かしらひとつの属性に染まる。
あとから白銀の髪のショートの女性がやってくる。ずいぶんと軽装だ。シーナ。そう名乗っている。2人が世界中を飛び回りひとつわかった事がある。人族はどうやら一枚岩ではないし、魔族側につくやつもいる。ということだ。やれやれ恐ろしい。
「どうしたの」
「ここまでくるとあいつが悪魔か魔族かどうでもいいな」
「えっ」
普段眉を寄せて常に不機嫌そうにしている友人が妙に明るく言うのだ。そのまま村の中央まで歩いていく。
「えっギールス!」
丁度洗濯を抱えた村娘がなんだなんだと出てきたところだった。
「ミレーヌよ、久しいな」
「なん…なに!?」
「一緒に行くか。あの頑固者を一緒に締め上げるなら手を貸してやる」
「カノンの、こと?」
「そうとも。喜べ。俺が出向くんだ」
となりのシーナが止めるのも聞かない。
「今から行って会えるの?」
カノンは何日も前に姿を消しているのに。
「俺を誰だと思ってるんだ…」
「異端の…天才剣士のギールス様…ですけど」
「異端はいらん」
距離などもはや計算にすらはいらない。

2/26/2026, 3:27:42 AM

男の手が顔の側にあった。大きくて筋張っていて土仕事に汚れた手。先ほどまで身体中を絡ませ、頭をなでてくれていた手の平。
怖いと思う暇もなかった。胸を削る孤独と自分への猜疑心にふれて、ミレーヌ自身も引き裂かれそうなほどの悲しみに揉まれた。どれほど彼は苦悩を抱えていたのだろう。自分に知られまいと気弱な笑顔を張り付けて。
だけど温かい汗ばんだ肌を合わせるとたちまち消えていく。堪らなく不思議に安らいだ。
平気かと聞いてくれる。もう、やめようよ、もういいよと言わないでくれる。受け入れることを受け入れてくれたんだと安心した。

2/23/2026, 7:24:40 PM

1人になるのが怖かった。
小さな頃からずっと一緒だった子分たちは、私には見えないはるか高くを見ている。わたしが二人を守らなきゃと思ってた時代なんてもう遠い。
皆のためにも強くならなきゃいけなかった。格闘術も精神力も。
追われて、追い詰められて、人ではない悪魔だと罵られる彼の一番近くにいてあげたい。どうか突き放さないで。
突き放されたら私。どこへいけばいいの。

村はもうない。血痕や生きていた証拠は出てくるけど、全部土石流に埋まってしまった。きっとどこかに生き残っている人がいるはず。それをささえに頑張ってきたのに。
土に流されてしまったあの村に、また新しく村をつくろうよ。側にいてくれる人を選べるなら、穏やかで優しいあなたがいいな。

2/23/2026, 9:31:31 AM

朝が来た。世界が白く明るかった。
生きていていいと言われているようで、ぬるま湯に浸かるように幸せで、羽で包まれているようだった。
カノンはゆっくりと起き上がる。あまり寝ていない。隣にいたはずの人の温もりはすでに無くて、軽く整えられた後が育ちを表している。
「僕はなんてことを…」
朝の鳥たちの歌声が聞こえる。
彼女を問いただすように、無理やりに抱いた。
扉の音がする。
「あら起きた?水飲む?」
そこには前と変わらない幼馴染がいて、カノンは胸にくるものがあり腰巻だけで飛びついた。
「ミレーヌご、ごめん。起きて大丈夫なの!?僕…」
「やだ、ちょっと…」
水がこぼれちゃったじゃないの、と彼女は眉を寄せている。
「ケガとかしてないわよ」
「だって…」
「や、やめてよ。なんか恥ずかしい…」
「僕も恥ずかしいけどっ」
まるで傷ついたかのようなカノン。だって、起きたら彼女は居なくなるかもしれない、良くて嫌悪されるかと思ったのだ。どちらが乙女か分からない…。

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