黒髪の薄汚れた服装の旅人が荷物をどさりと置いた。
「そうか…」
小さな出来立ての村は平らにならされて、周囲は堀と防風林に囲まれている。すべてカノンや疎開地の人々がやったのだ。
得意ではないが魔力の残り香を調べる。
「あいつ、妙に奇妙な体内の魔力の流れを感じると思ったが、人間ではなかったと言うことか」
知らなかったという風体ではない。ギールスは薄々感づいていたのだ。第一この世界のヒトは、何かしらひとつの属性に染まる。
あとから白銀の髪のショートの女性がやってくる。ずいぶんと軽装だ。シーナ。そう名乗っている。2人が世界中を飛び回りひとつわかった事がある。人族はどうやら一枚岩ではないし、魔族側につくやつもいる。ということだ。やれやれ恐ろしい。
「どうしたの」
「ここまでくるとあいつが悪魔か魔族かどうでもいいな」
「えっ」
普段眉を寄せて常に不機嫌そうにしている友人が妙に明るく言うのだ。そのまま村の中央まで歩いていく。
「えっギールス!」
丁度洗濯を抱えた村娘がなんだなんだと出てきたところだった。
「ミレーヌよ、久しいな」
「なん…なに!?」
「一緒に行くか。あの頑固者を一緒に締め上げるなら手を貸してやる」
「カノンの、こと?」
「そうとも。喜べ。俺が出向くんだ」
となりのシーナが止めるのも聞かない。
「今から行って会えるの?」
カノンは何日も前に姿を消しているのに。
「俺を誰だと思ってるんだ…」
「異端の…天才剣士のギールス様…ですけど」
「異端はいらん」
距離などもはや計算にすらはいらない。
2/27/2026, 7:58:41 AM