村人ABCが世界を救うまで

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2/14/2026, 1:33:29 PM

小さな人間を3人拾ったのは、瘴気を含んだ地方独特の雨が降っていた時だった。

2人は軽傷だったが、1人の少女は腹部に大きな出血があった。
背負われた娘に意識はある。だが血の気の引いた額に髪は張り付き、荒い呼吸を繰り返していた。朦朧とした瞳にもはや覇気はない。
「お願い、します。助けて下さい…」
旅人か家出か。こんな森の奥地に、地を知った村人でもあるまい。小柄であったが1人は戦士だろう。マントの下から薄い帷子の音がする。3人は酷く疲れていたようだった。
この俺が人助けだと。故郷も追われ長く独りのはぐれが。
「悪いが…」
雨よけの付加のかかった魔法壁の外で子供達の息を呑む音がする。
1人が物分かりよく目を逸らし、もう1人が目に涙を浮かべた頃だった。
「何よ!偏屈ね!これだから森の年寄りって言われるのよ」
甲高い声がした。驚いた。手の平ほどの妖精が娘の衣服から飛び出してきたのだ。
「お前…妖精か」
「まぁっ。田舎もんね、エーナスも知らないの」
知るかっ! 男は髪をうっとおしく掻き上げる。
確かによく見れば妖精の類とは違うようだが…
「妖精だかエーナスだかどうでもいい。お得意の回復魔法をそいつらに掛けてやればいいだろう」
「できないから困ってるんだってば!」
改めて理解した。彼ら3人を雨から守っているのはこの妖精…いや、エーナスとやらなのか。特殊な場合を除き魔法は一度に1つしか発動しない。
「助けてもらう態度か、それが…」
そう言った途端、少年が泥の地面に崩れるように膝まづいた。
「お願いします!このままじゃ、ミレーヌが…!!」
懇願だった。人間には詳しくないが、子供にやらせるには余りに胸糞の悪い光景…。
雨はまだ続いている。
ああ、しまった。やられた。
…なんなんだ今日は…。もう後には引けない。
黒髪の森の偏屈老人。もといギールスの、よく分からない旅の道連れとは、この氷雨の中出会ったのだった。

2/14/2026, 3:52:45 AM

焦がれ望む背中をひたすら走り。空を跳び山を駆けて、休む時は火を囲む。
食事を渡した時の指先だけは忘れられなくて、寄せた肩の骨は思い出せるのに、振り向いた時の声は遠い。いつか記憶は沈む。忘れたわけじゃない。時が埋もれさせていくのだ。

思い出なんてなければいいなんて。もう思わない。

2/8/2026, 7:24:24 AM

ささやかな願いを闇が落ちる度に曇天のたびに満る雨水に駆る。祈るほど信仰心厚くはないから、悪霊に魂を売るほど純粋ではないから、ひたすら走るあなたに付いていきたい。

2/2/2026, 9:49:57 AM

私が2歳の時に、小さな三毛猫が我が家にやってきた。
ちいちゃん。人間の子供がいる家庭でも辛抱強く遊ばれてくれるメス猫だった。
うちのママは「チイ!壁ボロボロじゃないの」と怒って猫を探す。チイは高い所が好き。 彼女はかわいい顔に似合わずいたずら好きだった。
「ちいちゃん、ママもう行ったよ」
って私が言うと「なぉん」って本棚の上から目線を送ってくる。
まるで「ママやっと行ったわね」って言っているような余裕をかましている甘い声。

私が叱られたときは、そばに来てくれて、ふわふわな額を腕にこすりつけてゴロゴロ喉を鳴らしていた。私たち、助け合ってるみたい。これからもずっと一緒よ。って思ってたのにな。
私が社会人になったころに、ちいちゃんはすっかり小さくなって目が見えなくなって歩けなくなって、最後は冷たくなっていってしまった。
お医者さんにも連れて行って「長く生きましたね。一緒に居たかったのでしょう」
家族みんなで代わる代わる看病していたけど、最後は私の腕のなかで旅立ってしまった。愛してる。私の親友。また来てね。

私はその時大人になっちゃってると思うけど、女子同士でまたいっぱいお話ししたいのよ。

1/25/2026, 10:03:33 AM

雨が降ってきていたのに洗濯物が出たままだった。だからお母さんは仕事から帰ってきて、怒りながらご飯の支度をしている。そしてなんで今更出すのと懇談会の紙を机のうえに叩きつける。時間がない時間がないって、いつも言うから、僕はじっとしている。
僕はお母さんが忙しそうでなかなかいえなかった。
病気になったら仕事を休まないといけないって怒ってて。算数のノートがもうないって言ったら、そんな時間はないって怒ってる。
僕がいけないんだ。ごめんなさい。褒められたくて掃除をしたけど、うまく出来なくてかえっていけないことをしたみたい。こっそりご飯を作ろうとおもったんだけど、余計なことしてって言われちゃった。ごめんなさい。僕は、僕は。前みたいに笑ってお母さんと色々喋りたかっただけなんだ。

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