柔らかな体に触れる。
胸がうずくほどきめが細かくてさらりとした触り心地だった。
細い身体が飛びついてくる。
白い花のような香りがして、その後に甘い。
信じられないほどに心が乱されて、ひどく乱暴に抱き返した。子猫のような悲鳴に似た声が上がったけれど、黙らせるように口を封じる。唇の柔らかさを堪能した。彼女の香りが一層強くなる。待ち震えていたのか、薄い舌先を探り呼吸ごと吸い上げた。
すぐに苦しげに抗議しだして軽く殴ってくるけど、彼女の弱いところを撫でさすると、腕の中で溶けるように大人しくなっていった。
異性への恋ではなく。親へのような情でもなく。
自分は、彼女が居なければ生きてはいけないと思うけれど、かと言って敬愛だけでもない。
過去に囚われ発狂する獣のような彼女が好きだ。
周囲を破壊し自らの両腕さえも血だらけにするけれど、時間が経ち我に返って懺悔する彼女を見ていて心地よい。
崩れ落ちる表情は甘い。乱れた髪から覗く幼子のような縋る瞳にぞくりとする。
「僕が居ますから」
歪んだ性癖だと自覚はしている。
暴れた彼女がつけた傷は痛むけど、何倍も彼女からの執着を感じる。
やっと頷いてから、白くて傷だらけの腕が自分の首に回ってくる。
自分は決して素肌の奥には指を入れずに、華奢な腰をただ寄せた。骨を感じるほどに掻き抱く。鉄の匂いがした。
追い縋ってくる女に、和樹は極めて冷淡に話した。
年の頃は20の長めの金髪を無造作に垂らす繊細な細面だった。
「誰が助けてほしいと言いましたか」
それまでの紳士的な…ある意味気弱な青年の素顔が払拭されるほど機械的だった。
残念です。と付け加えて、細身のサーベルを鞘走らせる。
娘が激高して指を突きつけるが、和樹には届かない。
おびただしい数の獣の影が遠くから音もなく現れたが、想定の範囲内。
周囲の空間が切り取られるように歪み、死神のような風体の少女が降り立つ。漆黒の衣服に長い鎌を持っていた。
「だから言っただろ。人間の女に入れ込むなって」
少女は周囲にいくつも結界とバフを掛けていく。
「ガチャみたいなもんだ」
この世に即戦力となる器はなかなかいない。殺してしまえ。少女に命じられ和樹は子供たちの目の前でひゅっと音を鳴らして刃をふるった。首が落ちる音がする。
「そうでした。SSRは最初に当たったんでした」
は?なんだそれ?
少女は俗っぽいことを突然言い出した相棒に怪訝な顔をする。和樹はもとの柔和な顔を取り戻していた。
「助けてくれた人がね、SSRだったって話ですよ。付いていきますよマスター」
ひどく苦しくてベッドのシーツを握りしめると、汗ばんだ大きな手が胴を支えてきた。
「掴まれ」
体位を変えて私達は向き合った。
「恥ずかしい」
私はやっとのことで照れ隠しもあって呟いた。
先程から彼の顔が見られないのだ。だって、いつもよりずっと逞しくて雄々しくて気圧される。抗えない。彼のこんな姿は初めてでどうしたらいいかわからない。
「動くよ」
低い声。
私の言葉は聞こえて居ないかのように無視をされた。
激しい荒波は獣のように理性を飛ばし千々に乱す。体の奥の方で何かを感じた。苦しくてもやっと彼が押し開いた扉だった。
「もっと顔見せて」
やっと聞けた声も、私と同じように苦しげだった。
北さんよ……子供寝かせてる時にミサイルやめてくれんか…
迷惑料もらいますよ…