白い素肌にキツく口付けると、滲むように朱色が付いた。花が散ると表現されるけど、そこまで綺麗な表情ではなくて不格好で。かえって自分が蹂躙したようで背徳感もあった。
美しいものを壊してはならないとずっと説かけられてきたけど、自分のものにならないならこれほど爽快なことはない。
心は手には入らぬもの。隠して独り占めにもできない。
片方ばかり気持ちがいいのは不自然だと思う。
受け取るばっかり。与えられるばっかり。
気遣うばっかり。やってもらうばっかり。
性別で区分けするのはナンセンスだと思うけど、
それでも生物の構造上どちらがリスクを背負うかは決まってくるよね。
なぜ受け身なのだろう。
なぜ捧げないと捨てられるのだろう。
そんな格好をしているから。
勘違いするなよ。
お前だって気持ちよかったよな??
良かったことなど一度もない。
演技だよ。99%は演技。
子供を宿して、無理やり掻き出せば二度と妊娠できない身体になる可能性すらあるのに。
声が優しくて、抉るように低い声なのに何も怖くない。
ああずっと聞いていた声だ。聞き間違うはずなんて無い。
長いトンネルだったけどいつだって連れ出してくれるのはあなたでした。
叫び過ぎて枯れた声だった。
男に乗り上げられてどんなに苦しかったか。
それでも、両手を広げて受け止めてくれる。
おまえさんの涙を拭う度にひどいやつだと自問する。長い距離だったが支えてくれた君がいた。
滑らかな肌だった。唇で感じで冬の冷たい香りが頭に広がる。どんな甘菓子よりもあまくて、どんなワインよりも芳しい。
少しずつキスをして胸の内に広がる幸福は感じたことがない。君が祝福にあやかりますよう。享受すべき優しさが余すことなくその身にありますように。
相手の上がった息に興奮する。落ちる汗に紛れて優しい匂いが上がってくる。しっとりした肌に引き寄せられて、神の雫に思えてちろりと舐め上げる。
上ずった声がまた色っぽくて自分もまた熱が回る。
もっと抱きたい。肩を捕まえて自分の腕に閉じ込める。名前を呼ぶ声が切なそうで背徳感にも似た邪悪な想いに捕らわれる。この身体余す所なく自分のものだ。
もう互いの呼吸と鼓動しか聞こえない。もう限界だ。なんて熱さだろう。