地獄の記憶→悲しんではいけませんか。の続き
※ ※ ※
「発達障害の長男と暮らす3」
「男の子って皆そういうものだよ」
分かったようなこと言わないで。
何度うちの子がおかしいと相談しても、まともに取り合ってくれない。皆例のセリフで一蹴するのだ。
「男の子はそういうものだから気にしすぎ(笑)
皆が同じ思いをしているんだから
あなたも育てられて当たり前(笑)」
その度に狂いそうな毎日を否定される。
味覚や感覚が過敏なせいで
ある日突然飲み食いをやめた赤ん坊の息子。
丸一日何も飲んでない食べてない。死に物狂いであれこれ試して、それでも食べないし飲まないのだ。
市に電話したけど「担当のものがいません」で終わる。
そういうもの?本当に?
どうして母の勘を軽視するのだろう。
今もこんなに
苦しんでいる。
母にだけ当たりがキツイ。
これは昔から変わらない。
味噌汁ひとつとっても、メーカー、味噌の濃さ、割合、具材、温度、量、その全てが引き金となる。
「昨日と味が違う」
「味噌が違う」
「大根が入ってない」
「熱い!!!!量が多い!!!!」
投げられるお椀。ぶちまけられる味噌汁。
恐怖で泣きはじめる下の子。
私も怒りより悲しさが溢れてくる。
早く遠くに行って欲しいな…。
下の子と暮らしたい。傷つけられた自分と重なるのだ。
※ ※ ※
本日のお題「宝物」ですが、続きを書き殴りさせていただきました。申し訳ありません。
ふわっとぼんやり薄いのが浮かんだので温度差がすごいのですが…(爆) 載せさせてください。
「宝物」
世界を敵に回しても手に入れたいかというと
そうでもない。
世界そのものが彼女を作り上げているからだ。
歯が浮くようなセリフも言えない。
分かってくれるといい、なんて幻想か。
じゃれて組み敷いた彼女は照れて笑う。
「誰にも見せたくないけど、見せびらかしたいってこういう感じか」
何の話と問われるけど、いたずらを始めた手で誤魔化す。
肩に回る細腕に誘われて唇を重ねた。
昼間なのに燻り始めた熱をどうしてくれる。
「発達障害の長男と暮らす2」
「お前より私の方が大変だったからお前も苦しめ」
「私の時の方が大変だった」
こんな呪いがありますか。
ここで注意していただきたいのは「昔」ではなく、「私の方が」とくるのだ。
お前の苦しみなど私に比べたら大したことではない。だから我慢しろと。恵まれているのだと。
弱音を吐いてはいけませんか。
悲しんではいけませんか。
助けを求めてはいけませんか。
一番不幸でなければ泣いてはいけないのですか。
これは
「三つ子の方が大変なんだから、一人目で大変だというお前はおかしい」
という奴と似ていますね。子供の一人目は楽で当たり前で「大変だ」と言うことすらおこがましいとでも言うのでしょうか。
※ ※ ※
本日キャンドルのお題でしたが、前日の「地獄の思い出」の続きにさせていただきました…申し訳ない
「発達障害の長男と暮らす1」
うちの子は悪魔だ。
人参の切り方が数ミリ違うだけで皿を投げる。
おかずの味が違うと言いだし手を付けない。文句ばかり。品数が少なくても嫌味を言われる。すぐに飽きたと食べられないものが増えていく。
椅子が数㌢ズレているだけで蹴飛ばし、目が合っただけで怒鳴り散らす。逃げたい。
私のように苦しんでいる人は、分かってくれる人にSOSをしようねと呼びかけたら
「羨ましい」と来た。
助けを求めて助けられた経験があるからそんなことが言えるのだと。
「私よりお前のほうが楽なんだから弱音を吐くな」
「私のほうが大変だったのに一人でやった」
「お前より、辛いやつはいくらでもいる」
だから甘えるなと。
本当に恐ろしい世界…
きっと楽しかった思い出もどこかにあったんだろうけど、終わらない地獄の記憶しかない。
魔物に食料代わりにさらわれて2日経つ。
「死なれては困る」
粗末な容器で水が与えられた。
最初は泣いていたけどお腹が空いてきた。
「もう少し後で食べるとしよう」
付近で盗んできた食べ物が与えられた。
寒かったので藁を編んで靴や外套代わりにした。
「いいな、それ」
大きなパンツと靴とマフラーを編んであげた。
ちょっと工夫して敷物も完成した。
「もう少し太ったら食べてやるからな」
甘みがぐっと増した果物が与えられた。
箒を作って洞窟を掃除して
火を付けるのもうまくなって、暖を取り煮炊きもできるようになったし、雪から水を得るようになった。
「冬が来たら食ってやる」
熱を出して寝ているとそう言われた。
やっと熱が下がり起き上がる。
枕元のそばに花がそっと置いてあった。
明け方のほの明るい世界で、薄衣を纏い眠る娘。
肩まで毛布を掛けると鼻にかかった子供のような声がした。
「おはよ…」
「うん」
寝てないのかとか問われる。寝れるわけがない。こんな半裸の彼女の隣にいて眠りこけられる男がいるものか。
「何もしてこなかったね」
「してほしかったのか」
返事はない。薄蒼い髪が垂れ下がってくる。寝起きの乾燥した唇が触れてくる。遠くで鳥の声がした。
「はなればなれ」 はなればなれになる朝