やなまか

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9/29/2023, 1:59:23 PM


鳥の鳴き声すら聞こえない。
よく晴れた日であるのに、耳をそばたてても人の気配がなくて。
ああ、こういう時を言うのね。
誰も知る人が居なくなった世界を私は体感していた。

金属でできたあなたはいつか味わうのだ。
全てが老いて死に孤独に苛まれる。
なんて残酷なの。私は貴方を置き去りにする未来しか見えない。

「どうした!こわい夢でも見たか!?」
いつもより切羽詰まった声に起こされた。
寝ながら私は泣いていた。助け起こされながら私は答える。
「ええ、そう。こわい夢。でもいつかは本当になるかもしれない夢」
生々しい夢だった。
心配そうに金属の掌で頬を包んでくれる。この人を孤独にしたくない。
抱き締めて、癒されるのは私のほうだった。

9/28/2023, 3:25:49 PM

離れがたい。思うのが私だけじゃないといい。
玄関に降り、ふわりと振り向いたかと思うと腕を取られた。あっという間に腕の中。
背の高いたくましい肩に埋もれて彼の香りに包まれる。
腰を抱かれ頬を支えられた。
あ……。逃げたくなるぐらいの緊張だった。
すっかり温まった唇に塞がれる。何度もついばむようなキス。鼻から息がぬけて、震えるほどに心地いい。
「さらって逃げてもいいか…」
苦しそうな声。首元に顔が埋まる。私だって辛いのに。
抱き締めた瞬間に身体がぴたりとはまるように馴染んで、離れられないな。そんな意識に解かされた。

9/28/2023, 7:36:17 AM

深夜1人の少女がベッドで眠っていた。長い黒髪が顔を縁取る。
それを見守るのは3人。1人はアンドロイド。銀髪に銀のボディだった。
「起こすなよ。姫は眠ったところだ」
外は姫の存在を隠すような雨。
アンドロイドの隣にいる男の子が言った。
「寝なきゃだめなんだ?」
「だめだ。もう夜中だ」
反対側の女の子が言った。
「私たち眠くないわ」
お前達は昼間たくさん眠ったからな。こんな夜中まで起きているとは軽く誤算だったぜ。
「オレは戦うほうが得意なんだが……たまには守るのも悪くないか」
姫を守ろう。眠りを妨げるこの世の全てから。

9/26/2023, 10:16:04 AM

それはお前だ

耳をそば立てて君の足音を追う。じゃりじゃりと枯れ葉を踏む。この世に形を残してはならないと。
アスファルトに靴で擦り付けてそれで満足なの。
「消してやりなよ」
子供みたいだよ。綺麗な完成されたものをわざわざ壊したいなんてさ。
「迷うなよ」
「迷ってなんかない」
これは持論だが、この世にかけらさえも残したらいけないものがある。
多くが要らないと言うのなら僕らが貰っていくよ。さあ上着を着ておいで。連れていってあげる。

9/26/2023, 10:01:02 AM

黒い忍者が横切ってすぐに空気にとけた。
こちらを見てるよ。口元隠しても目がギロリ。
どこまでも付いてくる気だな。
知らないふりしてやるから、付いてくるといい。
歩いて歩いて振りかえると、ちょっと笑ってちょっと鳴いて飛び立った。

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