yagi

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2/28/2024, 2:32:18 PM

「遠くの街へ」


これ以上この街には居られない。
もっと遠くへ、遠い場所へ行かなくては。

全身の傷がビリビリと痛む。
ああ、身体が限界だと叫んでいる。

「キティア…」

無意識に愛しい人の愛称を口にする。
身体だけではなく心も限界に近いのかもしれない。

彼女に無性に会いたい、死ぬ前に、必ず…。

3/31/2023, 4:05:03 PM

「幸せに」

キミならなれると信じている。
たとえ隣にいる人が私じゃなくても、どこに居ても。

それでも私の隣以外で幸せになって欲しくないと願うのは我儘だろうか。



誰かこの感情を受け入れてくれ



12/17/2022, 5:59:57 PM

「とりとめもない話」


一緒に家で夕食を食べながら、今日あったことを報告する。
返ってくるのは適当な相槌だけの会話、というより事務的な報告。

でもそれができるのが平和である証拠なんだと、キミの傷跡を見て思う。
その傷跡が消えても、もう少しも傷付くことなんて起きないことを願っている。

8/5/2022, 2:52:06 PM

「鐘の音」


鳴り響く鐘の音とともに大きくなる歓声。
教会から白いドレスと白いタキシードに包まれた2人が出てきて花弁が舞う。
仕事上の関係で呼ばれた結婚式、新郎新婦と特別仲が良いわけじゃない私は一歩離れたところからそれをただ見ていた。
みんなが幸せそうに楽しそうに笑い祝福する。だが私にはうまくそれができない。
それでも彼は私のとの未来を望んでいるのだろうか。

そんなことを考えながらぼーっと様子を見ていたら何かが飛んでくるのが見えた。反射的に手を伸ばしてキャッチすると、さっきまで新郎新婦に釘付けだった彼らが私を見て歓声を上げている。皆が私を見ている、私だけを…。
負の記憶がフラッシュバックして吐き気と眩暈が襲ってくる。やめて、チガウ、ワタシ、ハ…。
過去のトラウマに囚われて動けずにいると、心地良い音が聞こえて現実に引き戻された。

「良かったな、ブーケもらえて」
「…え?」

彼の声につられて手元に目を落とすと思わず手にしたものはさっきまで新婦が持っていた可愛らしいブーケだった。
スッと優しく抱きしめられキスをされ固まっていた体がほぐれる。やっぱりキミの隣は安心する。でもそんなに積極的に愛情表現をするなんて珍しいな。
落ち着いてあたりを見渡すと新婦が遠くから目配せのようなウィンクをしてくる。私が忘れているだけで彼女と何か約束していただろうか…?いや、待て。なぜここに彼が、ガノがいるんだ?今日は一日仕事だって…まさか、

「仕事サボったのか?」
「ははは、お前のそういうところも好きだよ、ティアラ」




――――甘く受け止められないのは、人間じゃないから? 
所詮真似事だから?












*かんたんな設定
・私(ティアラ)→人に擬態して世界を見ている神族、ティアラは偽名、不特定多数の集団に注目されることにトラウマがある、結婚式自体良くわかってない
・彼(ガノ)→ティアラ同様神族だがかなり人間寄り、ガノは本名の愛称、仕事が休めず遅れて結婚式にやってきた
・新婦→私(ティアラ)のモデル(仕事)仲間、ブーケは狙って投げた
・新郎→彼(ガノ)の同僚

7/19/2022, 2:18:55 PM

「視線の先には」

いつも誰かに囲まれひらりひらりと舞う君の心は一体誰を見てるのか。
ほんの僅かの間、視線が交差した。すると、全身の筋肉が強ばって、心臓を吐くんじゃないかと思うくらい強い動悸と、クラクラする熱を感じた。
思考は、なぜあの輪に加われないのかということに囚われている。そうすれば、君の視界に入ることができるし、きっとこの胸の刺すような痛みもやわらぐだろう。それなのに、少し前に歩むことが出来ないのは…。




◇◇◇




いつもくっついてくる彼らより少し遠くから強い熱を感じる。私は何となく気まづくて、でも少し気になるその存在を周囲に目を向ける振りをして盗み見た。それは、見事な白銀でとても美しく逞しい狼だった。
あの時から一人でいるとキミの姿がフラッシュバックする。ああ、キミは何を見ていたのだろうか。私はキミに囚われているというのに。

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