yagi

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「鐘の音」


鳴り響く鐘の音とともに大きくなる歓声。
教会から白いドレスと白いタキシードに包まれた2人が出てきて花弁が舞う。
仕事上の関係で呼ばれた結婚式、新郎新婦と特別仲が良いわけじゃない私は一歩離れたところからそれをただ見ていた。
みんなが幸せそうに楽しそうに笑い祝福する。だが私にはうまくそれができない。
それでも彼は私のとの未来を望んでいるのだろうか。

そんなことを考えながらぼーっと様子を見ていたら何かが飛んでくるのが見えた。反射的に手を伸ばしてキャッチすると、さっきまで新郎新婦に釘付けだった彼らが私を見て歓声を上げている。皆が私を見ている、私だけを…。
負の記憶がフラッシュバックして吐き気と眩暈が襲ってくる。やめて、チガウ、ワタシ、ハ…。
過去のトラウマに囚われて動けずにいると、心地良い音が聞こえて現実に引き戻された。

「良かったな、ブーケもらえて」
「…え?」

彼の声につられて手元に目を落とすと思わず手にしたものはさっきまで新婦が持っていた可愛らしいブーケだった。
スッと優しく抱きしめられキスをされ固まっていた体がほぐれる。やっぱりキミの隣は安心する。でもそんなに積極的に愛情表現をするなんて珍しいな。
落ち着いてあたりを見渡すと新婦が遠くから目配せのようなウィンクをしてくる。私が忘れているだけで彼女と何か約束していただろうか…?いや、待て。なぜここに彼が、ガノがいるんだ?今日は一日仕事だって…まさか、

「仕事サボったのか?」
「ははは、お前のそういうところも好きだよ、ティアラ」




――――甘く受け止められないのは、人間じゃないから? 
所詮真似事だから?












*かんたんな設定
・私(ティアラ)→人に擬態して世界を見ている神族、ティアラは偽名、不特定多数の集団に注目されることにトラウマがある、結婚式自体良くわかってない
・彼(ガノ)→ティアラ同様神族だがかなり人間寄り、ガノは本名の愛称、仕事が休めず遅れて結婚式にやってきた
・新婦→私(ティアラ)のモデル(仕事)仲間、ブーケは狙って投げた
・新郎→彼(ガノ)の同僚

8/5/2022, 2:52:06 PM