何でもできそうな気はする。
だが結果が伴うかどうかは別の話となる。
だから私は距離をとり、愛の所在を明らかにしてこなかった。
その愛は自分の思い込みかもしれない。
愛は相互関係では無いと知っている。
熱量の度合いの違いは間違いなく存在している。
愛は無償の物だとも思いたくない。
下賎な私は相応の見返りが欲しい。
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既に佳境に入っている。
事前に支配人と示し合わせた合図であるドルチェとエスプレッソが運ばれてきた。
灯りが暗転しテーブル上のキャンドルが存在感を増す。
上着の左ポケットが私を急かす。
愛の所在を明らかにすると、彼女はハニカミ頷いた。
『愛があれば何でもできる?』
自省無き後悔は不毛だ。
私の永遠のテーマだ。
見事に禿げ上がった前頭部から頭頂部を恨めしそうに見ている鏡の中の齢50の男。
酷な話だ。
自ら率先して禿げた訳では無いのに…。
ここ日本では「ハゲ」に市民権は無い。
これ程までに言葉に対して気を遣う時代であるのに「ハゲ」の処遇はまるで改善されていなくて、未だに罵詈雑言の筆頭として扱われている。悲しいことに個性として認めては貰えていない。
ゴリッゴリの整形は市民権を得ているのに…だ。
そのくせカツラ被ったら嘲笑の対象なのだから、やってられない。
こちとら地肌剥き出しの真っ向勝負してんだよ!!!
造形美なんてクソ喰らえだ!
ちくしょうめ!
20代からAGA治療しときゃ良かったかな…。
AGA治療無き後悔は不毛だ。
『後悔』
ORIENT STARのスケルトンの腕時計。
SPINGLE MOVEの白のスニーカー。
MINI CLUBMANのツートンが愛車。
SONY XPERIAのスマホ。
無添加ワックスを湯煎して、ベルガモットとイランイランのアロマを7:3の割合で垂らし冷蔵庫で固めて作る自家製塗布香油を愛用。
その他にも、私にはこだわりの理が多数存在する。
過去にお付き合いしてきた男性は、ほんの浅瀬で溺れてリタイヤ。
深い海に住まう私の本体には、何人たりとも近寄れない。
わかってる。
私が深海から少しだけ浮き上がれば良いだけの話だ。
海から這い上がり、イカダや浮き輪にしがみつけば、私の悩みは即解決するのだろうけど…風に身をまかせるのが怖い。
風は制御できないから。
私は今、醤油ラーメンを啜りながら物思いに耽っている。
気付くと、スープの水面にメンマを並べ…イカダを作成していた。
どうやら、私はかなり追い込まれています。
彼氏が欲しいです。
『風に身をまかせ』
あれから5113日と23時間59分が過ぎた。
後、1分もすれば5114日…つまり約14年が経つ。
後、365日だ。
絶対に逃げ切ってやる!
と意気込んでいた矢先…時効が完全撤廃されたと知った。
日本という国は不思議な国で、加害者よりも被害者のパーソナルな情報がワイドショーを賑わす。
正直、被害者家族には同情している。
申し訳ないことをしてしまったな、と。
しかしながら、生活の質が明らかに向上している様を見ると、これで良かったのではないか…という感情が芽生えてしまうのも事実。
複数の加齢パターンを模した中年男性。
それが、どうやら私の手配書らしい。
自転車に乗った高校生の孫が手を振る。
「おばあちゃん、行ってきまーす」
「車に気をつけるんだよ、奈々」
はーい、と返事をしながら元気にペダルを踏み出した。
痛む左膝を引きずりながら、犯人もその場を後にした。
『一年後』
「子供のママでいさせてください」
何度も何度も懇願した。
弁護士の先生は目をつむり、眉間の皺を深くし、ため息一つ。
「岡さん…このままでは、ママではいられないまま…」
「─ 本当に残念です」
先生は席を立ち、一礼すると部屋を後にした。
身から出た錆。
同僚との不貞行為が、夫の雇った探偵により暴かれた。
共働きとは言え、家事や育児を夫に押し付けて、残業の体で逢瀬を重ねたツケが回ってきたのだ。
「数ヶ月間、監護実績が著しく少ない事がよろしくない。こんな状況では、第三者に育児放棄…と見做されても仕方が無い…」
先生の指摘は尤もなものだった。
先生の言葉が脳内を駆け巡る。
「おか(あ)さん…このママでは、ママではいられないママ」
Yo bro!What's up?
~ 子供のままで ~