昔の夢はあの鳥ように翼を広げて
色々な所に飛んで旅をする事だった。
誰もがそれを優しく笑って
頷いてくれていた。
今は鳥籠の中に居るだけ。
鳥籠の扉が開いたとしても
翼を広げて飛んでいく勇気はもうない。
誰もがそれが当たり前だと言う。
この翼はただの羽。
真っ暗な部屋で眠っていたの
ある時光が差し差し込み
貴方の小さな手が私をそっと
包んでくれたわね。
それから毎日貴方は私に
可愛いワンピースを着せてくれて
優しく髪を撫でてくれた。
どこに行くにも私を連れて行ってくれて
色々な景色を見せてくれた。
眠るときは私を抱きしめてくれた。
貴方から貰った名前は最高のプレゼント。
貴方がローズ色の口紅をして、
綺麗な宝石をつけ、自分のお世話をする頃
私の眠る場所は星が見える窓の側
私の役目は終わってしまった。
明日になれば私はここを離れ
貴方に貰った名前では呼ばれなくなる。
明日さよならの前に私との日々を
思い出してくれたら、
最後に名前を呼んでくれないかしら。
その大きな手でそっと
暗い部屋に戻してくれたら嬉しいわ。
今日は雲一つない空模様。
太陽の日差しがとても眩しい。
でも突然、雲行きが怪しくなり
だんだんと雨模様になり
地面を濡らし、時には稲妻が落ちる。
そしてまた青空が綺麗な日になる。
そんな中白い花は大きく綺麗に育つ。
君も同じだね。
朝目覚めて目が合えば満面の笑みを
見せてくれる。
でも突然大きな声で泣き、突然怒る。
そしてまた愛らしく笑う。
そんな私のリリーは大きく綺麗に育っていく。
「鏡よ鏡、この世で1番美しいのは誰?」
「それは貴方です。この世で1番美しい」
そう言ってくれた。
毎朝言ってくれたわよね、
「貴方は美しい、口紅も宝石も必要ない」
そして毎晩言ってくれたわよね、
「こんな美しい貴方を映せて幸せ」
「ずっと貴方だけを映す鏡でいます。」
そう言ってくれたわよね。
それなのにどうして、
映っているのは私じゃないの?
粉々に砕けた鏡の破片に
醜い私が映っているの?
ねぇ、早く答えてよ、
「この世で1番美しい」って
「美しい貴方だけを映す鏡です」って
いつまでも捨てられないものには理由がある。
私は貴方が捨てられない。
私が逢いたい時には逢えないのに
私が目を覚ますときには居ないのに
ベッドの上で愛してると言って
綺麗な夜景が見える部屋に
私だけ置いて出て行くのに
それでも恋しくて、愛しくて、欲しくて
貴方をずっといつまでも捨てられない。
貴方は私を捨てられない。
一生守ると誓った指輪がありながら
一緒に朝を迎える場所がありながら
ベッドの上で愛してるとさえ言えば、
綺麗な夜景が見える部屋があれば
我儘を言わないおもちゃだから
貴方は私を捨てられない。
ねぇ、私達いつまでも捨てられないね。