幸太郎

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4/16/2024, 6:51:37 AM

クローゼットの中を整理していると、
友人から
「苦労が多いね」
と、言われた。
友人は高級クラブのホステスである。
なるほど、彼女くらいになると、
着ている服で相手の心理状態が分かるらしい。
さすがである。
私は「そうなのよ…」
と、今までの苦労を赤裸々に語った。
語り終えると、友人はポカンとした表情を浮かべていた。
どうやら、
「苦労が多いね」ではなく
「黒が多いね」と言っていたようだ。
届かぬ想い…

4/14/2024, 12:05:08 PM

「みんな、自分の願い事ばっかりで、
全然自分のこと気にかけてくれない」
神様ヘルプ窓口に訪れた神様は言った。
私はうんうんと頷く。
まずは相手の話を否定せずに聞くことが重要である。
今、ちまたでは
「ゴッドハラスメント」なるものが流行っているらしい。
登校拒否ならぬ降臨拒否、
不登校ならぬ不登降である。

4/13/2024, 10:45:07 AM

「シヌノワイヤー!」
と、ロボットに乗った美少女が叫んだ。
快晴の空に響く。
怪人の私は何か強力なワイヤーを射出するのだろうと身構えた。
しかし、一向に射出されない。
どうやら彼女は
「死ぬのは嫌っ!」
と、叫んでいたらしい。
人間は非道である。

4/13/2024, 2:36:51 AM

「さて、人間どもを殺戮しよう」
地球に到着して早々にリーダーが言った。
仲間達が頷く。
「今回はこの薬をこの星に散布する」
リーダーはおもむろに懐から小指サイズの小瓶を取り出した。
仲間達はそれを見て震え上がった。
「そ、それはあまりにも残酷ですっ!」
「わかっている。しかし、急がねばならん任務だ。致し方ない」
散布を終えた宇宙船は遠くの空へと消えていった。

僕は船内で先輩に尋ねた。
「あの薬ってどんな効果があるんですか?」
「人間を強制的に500年ほどしか生きられない身体にする薬だ」
「そ、そんな!なんて残酷で非人道的な薬なんだ!」
僕達、ヨクイキール人の寿命は約5億年である。
寿命500年といえば、ヨクイキール蝉と同じくらいだ。
はかな過ぎる。
自分達ヨクイキール人の残虐性に僕は憤りを感じた。

4/11/2024, 11:53:35 AM

妻の父方の祖父が亡くなった。
地元では名の知れた地主だったらしく、
葬儀は盛大に行われた。
場が静まりかえった頃、
親族だけで集まる別室に移動した。
ほぼ部外者である私は大広間の片隅で小さくなっていた。
用意されたお茶に手をかけようとした時、
大声が響いた。
「歯は私がもらうことになってました!」
何事かと身を乗り出すと、広場中央に人混みができていた。
妻がこちらにやってきた。
「おじいちゃんの歯が誰のものかで揉めてるみたい」
「歯?」
「おじいちゃん、総入れ歯だったんだけど、それが全部金歯だったのよ」
なるほど、ただの歯ならばいざ知らず。
金歯になると資産である。
所有権について揉めているようだ
「奥から2番目はワシのだ!」
「犬歯は全て俺のだ!」
「一番大きいのくれるって言ってた!」
と、異様な会話が飛び交う。
私はヤレヤレと呆れてお茶を手にした。
妻が含み笑いを浮かべて言った。
「大丈夫。ちゃんと奥歯は確保してあるから」
私は何も言葉にできなかった。

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