食後にソファーに寝転ぶ。
ふと、
目の前のカレンダーに目が止まる。
A2サイズくらいの大きなカレンダーには
ところどころに書き込みが見られる。
「9月は30日まであるんだなー」
と気づく。
30という数字をボンヤリ眺めていると、
「そういえば、私は今年で30歳だな」
と思う。
カレンダーだと、
1ヶ月が終わるのか…
そう考えると
「人生なんて3ヶ月くらいしかないんだな」
と、意味なく哀愁のようなものを感じた。
好きな女の子と
向かい合わせに座る。
俺は今日、告白する。
「愛してる」とか
「ずっと好きでした」とか
そんなありきたりな言葉で
想いを伝えたくなかった。
そんな売れない歌手の思考で、
俺は想いに英語を交えた。
ヒネリがないと思い、
スワヒリ語とヘブライ語も混ぜた。
なんなら
ミステリーサークルのイラストも添えた。
俺の想いの詰まった手紙を
目の前で彼女に渡した。
彼女は頬を赤らめて読んでいたのだが、
最後にはその色は青く変わった。
俺はふられた。
どうやら、
最後のミステリーサークルの意味が
「近づくなブス」
という意味だったらしいことに
後で気づいた。
宇宙人の彼女には
ストレートに響いたようだ。
俺が世界初の
ミステリーサークル翻訳家を目指した
きっかけである。
I wish I were a bird.
と、英語でカッコつけた。
「鳥のように自由に空を飛べたらな〜」
と、特に不遇なわけでもないのに
思春期の頃は空を見上げた。
さて、俺は今、
鳥になっているわけだが、
まさかニワトリになるとは
思いもしなかった。
目に見えるのは地面ばかりだ。
I wish I were a bird.
明日はカラアゲにされているかもしれない。
小学生の頃、
合わせ鏡をして鏡の中を
観察するのが好きだった。
無限に続く世界に好奇心を抱き、
「不思議だな〜」と思っていた。
5つ上の姉から
「妖怪が出てくるから止めなさい」
と言われたことがある。
私はそれはそれで興味深くなり、
一人でコッソリ続けたのだが、
妖怪には会えなかった。
日本には『八百万の神』がいるらしい。
そして、
『百鬼夜行という妖怪達』もいるらしい。
日本人は外国人の区別は出来ない。
逆もまたしかりである。
はて?
日本人はどうやって、
妖怪と神を区別しているのだろう。
夜の海を眺める人はこう思う。
「怖い」と。
認識できる範囲が狭くなるからだろう。
危機感を覚えるのは生物として当然である。
では、
「生まれつき目が見えない人はどうか」
彼らにとっては朝の方が
「怖い」のではないか。
それは人間社会の動く音とか。
目が見える私達は
目で「眺める」のではなく、
耳で「眺める」ように切り替えたとき、
世界の価値観が変わるのだ。
いつでも「切り替えられる」
能力があるにもかかわらず、
それをしない人間は多い。
能力があり過ぎて
どこでどう切り替えれば良いのか
分からないらしい。
「五感を減らす」行為が
「劣化」だと認識するなら無理もない。
人間がこの「切り替え能力」を
上手く使いこなせたなら、
それは進化なのではないか。