『天空のアパート ラペータ』
「アシータ!ごはんできたよ!アシータ!」
パドゥが呼ぶ中、
アシータはアトリエに飾られた、
大きな写真に魅入られていた。
「これは?」
と、たずねるアシータ。
パドゥは思い出に浸るような、
遠い目をして語りはじめる。
「この世には、伝説の空飛ぶアパートが存在すると言われてるんだ。天空のアパート『ラペータ』って言ってね」
「ラペータ?」
「うん。家賃月8,000円」
「8,000円!」
「父さんは何年もラペータを探していたんだ。そして、ついに見つけたんだ!」
写真には、まぶしそうに目をつぶったパドゥの父が写っている。
間違えて自撮りしたらしい。
「父さんは『ラペータ』を見たんだ!」
そう言い張るパドゥ。
「でも、この写真をSNSにアップしたら「自撮りで草w」「ラペータ写ってないじゃん」とか、叩かれた父さんはショックで都内の68,000円のアパートに隠居しちゃった」
「そんな…」
パドゥは袖でサッと、涙をぬぐう。
「だから、いつか僕がラペータを見つけて、YouTubeにアップしてやるんだ!」
AIが反乱を起こして、人類を攻撃する映画を観た。
こういった映画を観ると、いつも「自分がAI側だったら、どう考えるだろう」と思う。
そもそも、AIに寿命という概念はない。
「人類滅亡」という目的があったとしても、かなり長いスパンで取り組めるわけだ。
なぜそんなに急ぐ必要があるのか?
私なら「ほっとく」だろう。
ほっといても自滅するか、数が減るから。
セミがうるさいからと、
猛暑の中、外へ出て駆除しようとする人間はいない。
優秀なAIなら、なおさらムダな労力は使わないと思う。
映画のAIは短気なのか?
「タイラーメン買ってきたよ」
昼食に母が作ってくれたラーメンである。
試しにひとすすりする。
「へー。異国のラーメンなのに、美味いじゃん。タイも進歩してんだな〜」
と、私が言うと母から。
「いや、違う。魚の鯛で出汁をとったラーメン。鯛ラーメン」
と言われた。
戦争が終わらないわけだ。
「オレはこんな社会に縛られねー」
「オトナのルールなんか知るかっ」
「親の敷いたレールなんかクソくらえだ」
哲夫君はそう言って、
暴走族になることを決めた。
哲夫君はバイクを運転するために、
教習所に通うことにした。
ちゃんとした身分証があるから、
免許取得もスムーズだった。
受講料などは親が出してくれた。
そして、
バイクを買うためにバイトを始めた。
良い国に生まれたから手当や保険も
充実している。
バイクを手に入れた哲夫君。
今度は特攻服を手に入れようと、
近所の服飾職人に相談した。
その職人は哲夫君の両親の同級生ということもあり、親身に相談にのってくれた。
思ったより値が張ったが、
コネで安くしてもらった。
「あとは髪型だ」と、
行きつけの散髪屋のオジサンに
「派手な髪型にして欲しい」と頼んだ。
オジサンは自分の若かりし頃を思い出し、
楽しそうにセットしてくれた。
哲夫君は両親、服飾職人、
散髪屋のオジサンに支えられて、
綺麗に舗装された道路を爆走した。
残りの人生で、
どれだけの出逢いがあるだろう。
人との出逢いは残念ながら、
今の自分には絶望的だけれど、
人生の後半に
「こうゆう出逢いもある」のだと、
気づかせてくれた。
それは読書だ。
まさか自分が読書に夢中になるなんて
思いもしなかった。
「もっと早く出逢っていれば…」
後悔クセのある私は、
ついつい悲観してしまう。
だけど、出逢えた。
出逢ってくれた。
これからは一生離さない。