幸太郎

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4/13/2024, 2:36:51 AM

「さて、人間どもを殺戮しよう」
地球に到着して早々にリーダーが言った。
仲間達が頷く。
「今回はこの薬をこの星に散布する」
リーダーはおもむろに懐から小指サイズの小瓶を取り出した。
仲間達はそれを見て震え上がった。
「そ、それはあまりにも残酷ですっ!」
「わかっている。しかし、急がねばならん任務だ。致し方ない」
散布を終えた宇宙船は遠くの空へと消えていった。

僕は船内で先輩に尋ねた。
「あの薬ってどんな効果があるんですか?」
「人間を強制的に500年ほどしか生きられない身体にする薬だ」
「そ、そんな!なんて残酷で非人道的な薬なんだ!」
僕達、ヨクイキール人の寿命は約5億年である。
寿命500年といえば、ヨクイキール蝉と同じくらいだ。
はかな過ぎる。
自分達ヨクイキール人の残虐性に僕は憤りを感じた。

4/11/2024, 11:53:35 AM

妻の父方の祖父が亡くなった。
地元では名の知れた地主だったらしく、
葬儀は盛大に行われた。
場が静まりかえった頃、
親族だけで集まる別室に移動した。
ほぼ部外者である私は大広間の片隅で小さくなっていた。
用意されたお茶に手をかけようとした時、
大声が響いた。
「歯は私がもらうことになってました!」
何事かと身を乗り出すと、広場中央に人混みができていた。
妻がこちらにやってきた。
「おじいちゃんの歯が誰のものかで揉めてるみたい」
「歯?」
「おじいちゃん、総入れ歯だったんだけど、それが全部金歯だったのよ」
なるほど、ただの歯ならばいざ知らず。
金歯になると資産である。
所有権について揉めているようだ
「奥から2番目はワシのだ!」
「犬歯は全て俺のだ!」
「一番大きいのくれるって言ってた!」
と、異様な会話が飛び交う。
私はヤレヤレと呆れてお茶を手にした。
妻が含み笑いを浮かべて言った。
「大丈夫。ちゃんと奥歯は確保してあるから」
私は何も言葉にできなかった。

4/10/2024, 4:34:37 AM

誰よりも、ずっと幸せになりたい。
そう思っていた。
誰よりも先に手に入れようとした。
相手を押しのけることに必死になった。
そして勝ち誇る。
競争に負けた相手を見下した。
「残念。こうゆう日もあるさ」
と、隣で負けた男が子供に言った。
子供は駄々をこねている。
「お昼はレストランで大好きなハンバーグよ」
と、男に寄り添う女が言った。
子供は不満ながらも大人しくなった。
そして二人の手をとって歩いて行った。
私の手には戦利品が握られている。
そこには幸せの証があるはずだった。

4/7/2024, 11:25:13 AM

道端で夕日が沈んでいる。
思いの外、かなり沈んでいる。
私はどうしたものかと考えた。
声をかけるべきだろうか。
いや、沈んでいるだけで
落ち込んでいる訳ではないかもしれない。
沈むのが趣味なのかもしれない。
そもそも私ごときがなんと声をかければ良いのか。
私ごときが声をかけて、
余計に沈んでしまったらどうしよう。
と考えていると朝日がきた。

4/6/2024, 11:01:49 AM

君の目を見つめると
君は不機嫌そうに目をそらしたね。
何日目だい?
前に君は目を腫らして
「面倒くさい」って泣いてたよね。
いいんだ。失敗は誰にでもあるから。
そこで二人で話し合ったじゃないか。
2週間に一度にしようって。
それでも上手くいかなかったっけ。
そのコンタクトレンズは
ワンデイアキュビューだよ。
何日換えていないんだい?

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