「ねえ、見てみて」
雨上がりの空を、キミは指差す。
「おっ、虹か。でかいな」
「ホントに大きいね。しかも、七色がはっきりしてて、すごくキレイ」
キミはスマホを取り出し、虹に向ける。
「ねえ、知ってる?」
キミは写真を撮りながら、僕の方をちらりと見て
「カップルが一緒に虹を見ると、2人の関係が進むかも…なんだって」
顔を赤くする。
「へえ、そうなんだ。でも…」
僕はキミを後ろから抱きしめ
「虹を2人で見ていなかったとしても、キミを手放す気なんて、全然ないよ」
そう告げると、キミの顔は、さらに赤くなるのだった。
まとめてですみません。
bye bye… 曇り もう二度と 記憶 です
bye bye…
「もうさ、バイバイしようよ」
「…え?」
突然の彼の言葉に、バイバイって何?今日のデートはもう終わりってこと?それとも…別れるってこと?と、呆然としていると
「自分に劣等感を持つのはさ」
ニコッと笑われる。
「…何…言って…」
「さっきからさ、すれ違う人と自分を見比べては、ため息吐いてるでしょ」
フッと笑われ
「…見られて、たんだね」
気づかれていたことに困惑して思わず目を逸らすと、隣にいた彼は私の目の前に立ち
「俺は、キミがキミだから好きになったし、そのままのキミと一緒にいたいと思ってる。だから、誰かと比べることはもうやめよう」
私の目を見つめ微笑む。
「…でも」
泣きそうな私の髪を撫で
「すぐじゃなくてもいい。キミが自信を持てるように、俺も想いを言葉にするから。ね」
優しく諭され
「…うん、頑張る」
「よし」
頷く私の髪を、彼はぐしゃぐしゃにかき混ぜながら、ニッと笑った。
「もう」
ぐしゃぐしゃになった髪を押さえつけながら
「bye bye…今日までの私」
そっと呟き、前を向くように笑ってみたのだった。
曇り
デートの待ち合わせに向かおうと外に出ると、曇り空が広がっていた。
「曇りかぁ」
いつもなら空を見上げため息を吐くところだけれど、今日はどんな天気でもニコニコだった。
「だって、キミとデートだから」
キミと会える日は、僕にとってはいつでも晴れ。
「早く行こ」
晴れやかな気持ちで、僕は待ち合わせ場所に向かうのだった。
もう二度と
「もう二度としないように気をつけます」
俺の目の前で頭を下げる部下。発注数を間違えて多くしてしまい、上司である俺が、何とかしたのだけれど…。
「気持ちはわかった。だから、頭を上げて」
「はい。本当に、すみませんでした」
謝罪をし、彼は頭を上げる。
「今回は何とかなったし、そんなに気にしなくてもいいよ。今度から気をつけてくれれば」
「…はい」
と言っても、落ち込んだ彼の顔は晴れない。
「ミスは、気をつけていてもしてしまうもの。だから、ミスをするのは仕方のないことだと思う。俺もするしね。ただ、ミスに気づいたらすぐに知らせてほしい。早ければ早いほど対策の仕様があるから、そこはお願い」
「はい」
「何かあったときのために俺はいるんだから、ミスしたら。なんて考えないで、今まで通りに頑張って。頼りにしてるよ」
笑顔で彼の肩をポンと叩くと
「はい。期待に応えられるように頑張ります」
いつもの頑張り屋な彼に戻る。
失礼します。と俺に背を向けた彼の背中を見ながら、負けないように俺も頑張らないとな。と思うのだった。
記憶
「俺と付き合ってください」
ずっと好きだったキミに想いを告げると
「…考えさせて、ください」
キミは悲しそうに目を伏せる。
「うん、返事は急がなくていいよ」
笑顔で応えたけれど、内心では
イヤって言われなかったんだし、望みはあるかな?
とか
すぐに断るのは申し訳ない。って思って、返事を後にした。とか?
と、ぐるぐると考えていた。けれど、そんなことを考えながらも、悲しそうな顔をするキミのことが気になり
「…もしかして、俺に想われるのはイヤだった?」
そんな言葉が口をついて出た。
「え、違う、そんなことない」
2人きりで話すことはないけれど、みんなでいるときに話すと笑顔を見せてくれる。その笑顔を独り占めしたいな。という思いから好きになったキミに、迷惑だと思われるのはイヤだった。
「じゃあなんで、そんなに悲しそうなの?」
「…私ね、男の人が恐いの」
胸をギュッと押さえ、キミは俺から目を逸らす。
「え?」
「想いを伝えてもらえてうれしいのに、ずっと2人きりでいるのは、できなくて…」
そう言って俯くキミに
「それって、何かそうなる出来事があったってことだよね?」
「…うん」
「なら俺が、そのイヤな記憶を、楽しい記憶に変えられるように頑張るよ」
俺は笑顔を向ける。
「でも…」
「今は、友達みんなで話したり、遊んだりしよ。そうやって過ごす中で、俺と一緒にいても大丈夫だ。って思えたら、付き合ってくれますか?」
「…ありがとう」
目を細め笑うキミに、キミが笑顔でいられるように頑張らないと。と思いながら、笑みを返したのだった。
どこ? 手を繋いで 君と見た景色 です
どこ?
「あれー、どこに置いたんだろう?」
僕は今、テレビのリモコンを探している。いつも置いてある場所では見当たらず、けど、辺りを探しても見つからない。
「おっかしいなぁ、どこ?どこだ?」
クッションを持ち上げたり、ソファをくまなく探しても、やっぱりない。
「うーん」
どうしたものかと困っていると
「どうかしたの?」
キミがリビングに顔を出す。
「テレビのリモコンが見当たらなくて」
「ああ、それなら」
キミは懐からリモコンを取り出す。
「良かった、キミが持ってたのか」
リモコンを渡してもらおうと手を出すと、キミはダメというように、首を横に振る。
「え?なんで?」
そう聞いた僕に、キミは不機嫌そうな顔になり
「おうちデートしてるんだよ?私をほったらかしてテレビを見るの?」
頬を膨らませる。
「…ごめん」
僕は出した手を引っ込め
「一緒に何かしてても別々に過ごしてても、キミがここにいてくれるだけで僕は幸せで。キミをほったらかしてるつもりはなかったんだ」
謝ると
「そっか」
キミは笑ってリモコンを渡してくれる。
「いいの?」
「うん。一緒に見よっか」
キミは僕の手を引くと、並んでソファに座ったのだった。
手を繋いで
楽しいときも、うれしいときも、怒ってるときも、悲しいときも、いつも隣で手を繋いでて。
あなたの手の温もりで、楽しいとき、うれしいときは笑顔があふれ、怒ってるとき、悲しいときは心が落ち着くの。
大好きなあなたに手を繋いでもらえたら、私は幸せでいられる。
私もあなたの手を繋いで、あなたへの想いを伝えるね。
だからずっと、私の手を繋いでて。
君と見た景色
君と見た景色をずっと覚えていたいけど、きちんと覚えておくことは難しいから、代わりに写真をいっぱい撮ろう。
君と行く場所は、どこもキラキラ輝いてて、君の笑顔もキラキラ輝く。
きっと1人では輝いて見えないんだろうな。
大好きな君と一緒だから、どこに行っても楽しいし、忘れたくないと思える。
これからもいっぱい、いろんな場所に出かけよう。
大好きな君と、たくさんの笑顔を残しておきたいから。
「キミのことが大好きだよ」
キミの手を取り伝えると
「ありがとう。私も大好きだよ」
微笑まれる。
大好き。って、短い言葉で伝える愛。
伝えても、聞いても、心が幸せで満たされる。
「これからも、いっぱい大好きって伝えるね」
「うん」
キミは幸せそうに目を細める。
それを見た僕も、幸せなのだった。
学校を卒業してから、初めて同窓会が開催されることを知り、地元に戻ってきた。
「みんなに会えるの楽しみだな」
学生時代しか知らないみんなが、どんな大人になっているのか、俺は今からワクワクしていた。
「でも1番は…」
その当時好きだった子。在学当時は想いを伝えられなかったけれど、今でも想いは忘れられず…。
「会えたら今度こそ…」
そう決心して、俺は同窓会に向かった。
「久しぶり、元気そうで良かった」
「お前もな」
仲が良かった奴らと、久しぶりに会うのに、当時のように話が盛り上がる。
「そういやお前、知ってるか?」
「ん?何を?」
「あの子、今日来てないだろ」
「え?そうなの?」
想いを伝えようと思っていたのに、来てないのか。と、残念に思う間もなく
「ああ。結婚して遠くに行ったみたいで、なかなかこっちに来られないらしい」
追い打ちをかけられる。
「へえ、そうなんだ」
何とか返事はしたものの、俺の心は複雑で。
告白する前に失恋した俺の恋。
あの子が俺の恋人になる。
叶わぬ夢とわかっているのに、この想いを断ち切ることができないのだった。