必要な物を取りに、実家に帰ったときのこと。
「えっと…あった、これだ」
探し物はすぐに見つかり、机の引き出しから取り出そうと持ち上げると、その下に、1枚の写真があった。
「…何でこんなところに?」
その写真を手に取り見てみると
「懐かしいな」
写真は、子供の頃の僕で、友達と写ったものだった。
「この写真って、みんなで遊んだときのだよな。自分たちよりも背の高い草の中を、さぁ冒険だ。って進んで行って。でも、見えるのは草だけで、どこをどう進めばいいかわからなくて、右に行ったり左に行ったり、止まって話し合ったり。無事に草の中から出られたときは、ホッとしたんだよな」
写真を見ながら当時を思い出し、思わず苦笑する。
「あ、でもこれって…」
今の僕みたいだ。仕事が上手くいかなくて、どうしたらいいか、先が見えなくて動けずにいる。
「あの時、迷いながらも草の中から出られたように、きっと今も…」
焦って動かなくても大丈夫。友達に相談したり、結論は急がなくてもいいんだ。そんな気がしてくる。
「ここに来たのは偶然じゃないのかも」
心が軽くなったのを感じ、家へと戻るのだった。
「おはようございます」
「おはようございます」
部署ですれ違いざま挨拶を交わす。
「今日もステキだな」
その姿は颯爽としていて、笑顔も忘れない。
「よし、頑張ろう」
入社したときからの、僕の憧れの上司。
常に僕たちを気遣い、仕事もできる。
一輪の花のように、気高く美しいあなたの力になれるように、そして、いつか恋人として隣に立てるように、今日も僕は仕事に励むのだった。
「もし魔法が使えるなら、どんな魔法がいい?」
魔法がテーマの映画を並んで見ていたら、キミにそう聞かれる。
「うーん、そうだなぁ」
考えてみるけれど、パッとは思いつかない。
「…キミは?どんな魔法がいい?」
思いつかないのでキミに振ってみると
「私は、食べたい料理が出て来る。とか、メイクが一瞬で終わる。とか」
口元を手で押さえ、キミはふふっと笑う。
「なるほどね」
キミの答えを聞き、もう一度考える。
「俺は、職場まで一瞬で移動…かな」
「あ、それもいいね」
にこにこ笑うキミを見て
やっぱり、魔法で。じゃなく、キミを笑顔に、幸せにするのは自分の力で。だよな。
と思うのだった。
夜空を駆ける と 君と見た虹 です
夜空を駆ける
「このままずっと、2人仲良くいられますように」
夜空を駆ける流星を見上げ、両手を組み、キミはつぶやく。
「ねえ、何をお願いしたの?」
流星が見えなくなり、俺に視線を移したキミにそう聞かれ
「秘密」
クスッと笑って答えると
「え〜、教えてよ」
キミは頬を膨らませる。
俺は流星に
「キミのことは、俺が幸せにします。俺たちが幸せになる姿を、見守っていてください」
と願ったのだった。
君と見た虹
「見て、虹が出てる」
雨が上がったのを見計らい外に出ると、空に大きな虹が架かっていた。
「…キレイだな」
足を止めて虹を眺めたことがなく、まじまじと虹を眺めていると、背後からパシャという音がする。
「?」
何の音?と振り返ると、君がスマホを俺に向けていた。
「何してるの?」
そう聞くと、君はにっこり笑って
「虹とあなたを撮ったの」
俺にスマホの画面を見せる。
「何で俺と一緒に?」
撮るなら虹だけを撮ればいいのに。そう思ってさらに聞くと
「虹を撮ろうと思ってスマホを向けたら、虹の輝きの中にいるあなたがすごくステキで。思わず撮っちゃった」
ふふっと笑う。
「また、あなたとの思い出が増えたわ。これからもたくさん思い出を増やそうね」
君と見た虹は、君のスマホのアルバムに、新たな思い出として刻まれたのでした。
仕事帰りに偶然見た、あなたが猫を撫でている姿。
仕事中の、緊張感のあるキリッとした姿とは違い、
セットした髪が乱れ、優しく笑う姿に、私の胸がドキッと音を立てる。
「はぁ」
それからというもの、あの時のあなたに会いたくて、仕事帰りにあなたを見た場所を、わざわざ通っている。
「…いない、か」
仕事でのあなたではなく、あの時のあなたに会いたい。という、ひそかな想い
今度会えたら、隣に座り、一緒に猫を撫でたいな。
と思うのだった。