「やっぱり冬は、こたつでみかんだよね」
キミと2人、向かい合ってこたつに入り、カゴに入れたみかんを食べていた。
「ん、今度のも甘い」
2個目を口に入れ、キミは目を細めるが
「ん、俺のは酸っぱい」
俺は思わず、眉を寄せる。
「え?そんなに」
とキミが驚くので、俺のを一粒渡すと
「ホントだ、酸っぱい」
口に入れ、顔をしかめる。
「私のもどうぞ」
キミのを一粒もらい食べると
「ん〜、甘い」
甘くて美味しい。
「甘いのと酸っぱいの…じゃあ、こうだね」
キミは食べているみかんを半分に割り
「あなたのも半分ちょうだい」
微笑まれ、半分を交換する。
「あなたのと私の。一粒ずつ食べれば…うん、酸っぱさが和らいだ」
ニコッと笑うキミに、キミが恋人で俺は幸せだな。
と思うのだった。
小さい頃は楽しみにしていた冬休み。
小学生までは、寒さにも負けず、友達と暗くなるまで外で遊んだ。
けど、中学生の頃は部活と塾で、高校、大学はバイトに明け暮れた。
雪が降って、楽しかったのも小さい頃まで。
冬休みは、小さい頃ほど楽しかった。
そんな思い出。
変わらないものはない と 手ぶくろ です。
体調を崩しました。
みなさまも、ご自愛ください。
変わらないものはない
「あれ?ここ、何だったかな」
久しぶりに通った道。いつの間にか、見たことない店ができていた。
「思い出せないなぁ。何だっただろう」
考えてみるものの、やっぱりわからない。
「うーん、ま、何でもいいか」
考えてもわからないので、気にしないことにして、さらに歩いて行くと、何かあったはずの場所が更地になっていた。
「…変わらないものはないんだなぁ。人も景色も。同じように見えて、日々、変化している。けどさ」
僕は空を見上げ
「何年一緒にいても、ずっと変わらず愛せる相手に出会いたいな」
そう思うのだった。
手ぶくろ
「寒いねえ」
会社帰り、キミと2人で駅に向かう。
「ホントに寒いですね。コートとマフラーだけじゃ…あっ」
コートのポケットに手を入れたキミが、声を上げる。
「どうしたの?」
「ポケットに入れたはずの手ぶくろがないんです。デスクに落ちてるかも」
両手に息を吹きかけ、シュンとする。
「あー、俺は持ってるけど…そうだ」
俺は手ぶくろを片方キミに差し出し
「片方だけどどうぞ」
と言うと
「でも…」
キミは戸惑った表情になる。
「それを着けて。で、もう片方は…」
そっとキミの手を握り
「イヤ…かな?」
恐る恐る聞いてみると
「いえ、温かいです。手ぶくろお借りしますね」
キミは微笑むのだった。
仕事帰りに、予約しておいたケーキを僕が持ち帰り、
キミが家で、料理を用意している。
「ただいま」
家に帰れば
「おかえりなさい」
キミと子どもたちが笑顔で迎え
「ほら、ケーキだよ」
ケーキを見せると
「早く食べよう」
子どもたちがはしゃぎだす。
「サンタさん、来てくれるかな」
食事をしながら
「いい子にしてるから、きっと来てくれるよ」
話が弾み笑顔が溢れる。
僕の理想のクリスマスの過ごし方。
その理想を手に入れるために、理想を叶えてくれる恋人を探そうと決意した、
イブの夜。
俺は1人、デスクに向かっていた。
「は〜あ。相手がいる人はいいよな」
俺にも恋人がいたなら、きっと、イルミネーションを見て、夜景のキレイなレストランで食事でもするのだろう。けれど、俺にはそういう相手はいない。
「…今ごろみんな、恋人とのデートを楽しんでるんだろうな」
部署のほとんどの奴らが定時で帰っている。
「けどさ、待ち合わせに間に合いそうにないからって、終わってない仕事を俺に押しつけなくてもいいだろ」
文句を言う前にさっさと帰られ、あとでトラブルになっても困るので仕方なくやっていた。
「来年こそは、押し付ける側になってやる」
静かな部署に響き渡るほどの大声で、誓うのだった。