理想郷とは
想像上に描かれた理想的な世界
らしい。
理想的な世界。ってきっと、争いがなく、みんなの差がなく、平等に暮らせている。
って感じなのかもしれない。
けど、僕が考える理想郷、理想的な世界は、実現できていると思う。
僕がいて、愛する妻と子どもがいて、笑顔で楽しく暮らせている。
ちっぽけだな。って言われるかもしれない。けれど、小さくても幸せを感じられる今の生活が、僕にとっての理想だから。
その理想を手放さないように、僕は頑張りたい。
旅行に行くのが好きな僕は、その資金を稼ぐために仕事を頑張っている。と言っても過言ではないくらい、旅行が好きだ。
テレビや雑誌で紹介されたところに行ったり、寺院巡りをしてみたり、ステキな景色を見て、自慢の料理を食べて、心から満たされる。一人で気軽に出かけるのが楽しかった。
けれどもそれは過去の話。
今の僕には、奥さんと子どもがいる。
毎日仕事して、子どもと遊んで、好きな旅行に行く余裕は一切なく、一人で旅行に行っていたあの頃を、懐かしく思うこともある。
でも今は、愛する奥さんと子どもがいて、一人での旅行では得られない、幸せをもらっているから、戻りたいとは思わない。
もう少し子どもが大きくなったら、僕が旅行で行ったお気に入りの場所に一緒に行きたいな。
その時を楽しみに、今日も僕は仕事に励み、子どもと遊んで過ごすのだ。
「もう少し早くあなたと出会えていたなら、私はあなたを選んだのに」
キミが見ているドラマから、聞こえたセリフ。
キミは夢中になって見ているけれど、僕は興味なく、スマホを見ていた。
「続き、どうなるんだろう」
ドラマを見終わり、キミはテレビを消すと
「ねえ。さっきのドラマみたいに、私がいるのに、あなたに、もう少し早く出会いたかった相手。が現れたらどうする?」
そんなことを聞いてくる。
「そんなの、聞くまでもないでしょ」
僕はため息を吐くと
「キミがいるのに、別の誰かを選ぶ。そんなもう一つの物語なんて存在するわけがない。だって僕は、キミを愛してるんだから」
想いを伝え、キミを抱きしめたのだった。
夜中に目が覚め、暗がりの中で手を伸ばすと、手が届くところにキミがいる。
そのことにホッとし、再び目を閉じようとして、ふと思う。
この安心感は何だろう?
一人じゃない、そばにいてくれる…。
そうか。キミは僕の心の支えになってくれてるんだね。
仕事で疲れたとき、上手くいかなくてムシャクシャしてるとき、失敗して落ち込んでるとき。
僕の話を聞いて、心を軽くしてくれる。
いつでも僕を包み込んでくれるキミがいてくれるから、僕は笑顔で過ごせるんだね。
僕と同じように、キミが夜中に目が覚めたとき、僕がいることでホッとしてもらえるように、僕もキミを支えていこう。
寝ているキミの手を繋ぎ、僕は再び目を閉じた。
「紅茶の香りは、心を穏やかにしてくれるんだよ」
そう言ってキミは、香りを堪能したあと紅茶に口をつける。
「美味しい」
確かにキミは、リラックスした表情をしている。
「紅茶、いつも飲んでるの?」
コーヒーを飲みながら、ケーキを口に運ぶキミに問いかけると
「そうだね。いい香りだし、紅茶の種類もいろいろあるし、飲むことは多いかな。けどね…」
「ん?」
「あなたと会うときは、飲むようにしてるよ」
キミはふふっと笑う。
「え?それはどうして?」
不思議に思って聞いてみると
「だって、好きな人と会うときに、疲れた顔とか見せたくないでしょ」
かわいい答えが返ってくる。
キミの答えを聞いて、僕のキミへの愛は膨らむのだった。