天気の話なんてどうだっていいんだ。僕が話したいことは、そうやって、別の話題を出して話さなきゃいけないことから逃げないで。ってこと。
確かにキミにとっては、話したくない、聞きたくない、できれば逃げ出したいことなのかもしれない。けどね、そうやって逃げてばかりで向き合わないでいると、いつか後悔するよ。
なんて、僕が言わなくてもキミはわかってるよね。
一人で立ち向かうのが怖いなら、一緒にいて手を繋いでいてあげる。涙が止まらないくらい心が傷ついたなら、泣き止むまでギュッと抱きしめてあげる。
だから、イヤなことから逃げないで。
そして、いつでも忘れないで。
キミには僕がいるってことを。
ただ、必死に走る私。何かから逃げるように。
走って走って息が切れて、そして気付く。
私は何から逃げているの?
理由がわからなくなって、やっとその場に立ち止まった。
滝のように流れる汗もそのままに、ハァハァと肩で息をしながら考える。必死に走っていた理由を。
少しずつ息が整い、脳に酸素が行き渡ると、やっと思考が追い付いた。
そうだ。逃げていたのは、今の生活からだ。
今の、同じことを繰り返すだけの生活がイヤになり、逃げていた。けど、走って逃げてわかったよ。
同じことを繰り返すだけの毎日が、実は幸せなんだって。逃げたくなるような出来事が起こらないことが幸せだって。そう気付いた私は、来た道を戻るのだった。
「ごめんね」
キミがそう言うたび、僕の心は痛くなる。
本当に悪いことをしたならまだしも、ことあるごとにそう言われる。
「謝るようなことじゃないよ」
何度伝えても、口ぐせになっているようで治らない。だから僕はキミを強く抱きしめ
「キミはいい子だ。誰にも迷惑をかけてないし、ダメな人じゃない。僕がキミを愛するように、キミも自分を愛してあげて」
キミがわかってくれるまで、僕はずっと言い続ける。
結婚式の日取りも決まり、結婚することに少しの不安も抱きつつ、式の日を楽しみにしていたある日。
「いろいろ悩んだんだけど、やっぱり結婚はなしにして」
何の前触れもなく、結婚相手の彼女に告げられる。
「何で?」
突然のことに頭は真っ白になり、出てきた言葉はそれだけ。
「だって、あなたって…」
彼女が、俺への不満を言っていたと思うんだけど、動揺している俺の耳にはあまり入って来なかった。
「何が悪かったんだろう」
結婚が白紙になり、幸せの絶頂から突き落とされる。
「まさに、天国と地獄を味わってるってことだよな」
ため息を盛大に吐いたところでスマホが着信を告げた。
「はい」
「あ、もしもし。平気か?」
電話の相手は、付き合いが長い友達。いや、親友だった。
「平気…じゃない。どんなところかわからないが、地獄にいる気がするよ」
俺がハハッと笑うと親友もハハッと笑う。
「何だよ」
笑われたことにムッとして怒気の孕んだ声を出すと
「返事ができるなら大丈夫だなって、ホッとしたんだよ」
感情も出せてるしね。と親友は続ける。
「俺にとっては、オマエの悪いところは考えても出てこない。相手が悪かったと思って忘れろよ。今度、酒でも付き合うからさ」
な。と言われ、地獄から引き上げられる感覚を覚える。
「もちろん、奢ってくれるんだろ?」
先程までと違い、軽口が叩ける自分に驚きつつ
「仕方ねえなぁ」
笑ってくれる親友に感謝をして、電話を終えたのだった。
あの頃の不安だった私へ。
将来、何になりたい。とかの夢もなく、ただ何となく過ごしているけれど、それなりに笑って暮らせてます。
不安なんて何もない。わけじゃないし、不満もストレスもあるけれど、その、不の部分よりも平穏な部分が勝っているから大丈夫。
友達とは、以前よりは連絡とらないけど、連絡すれば返してくれるし、このアプリのように、同じ楽しみを持つ仲間のような方々もいる。
だから、一人じゃないから大丈夫。
この先も、不の部分で落ち込んだりすることはあるだろうけど、手を差し伸べてくれる、優しい人たちがいるから、あまり深く考えすぎずに過ごしていこう。