YOU

Open App

結婚式の日取りも決まり、結婚することに少しの不安も抱きつつ、式の日を楽しみにしていたある日。
「いろいろ悩んだんだけど、やっぱり結婚はなしにして」
何の前触れもなく、結婚相手の彼女に告げられる。
「何で?」
突然のことに頭は真っ白になり、出てきた言葉はそれだけ。
「だって、あなたって…」
彼女が、俺への不満を言っていたと思うんだけど、動揺している俺の耳にはあまり入って来なかった。

「何が悪かったんだろう」
結婚が白紙になり、幸せの絶頂から突き落とされる。
「まさに、天国と地獄を味わってるってことだよな」
ため息を盛大に吐いたところでスマホが着信を告げた。
「はい」
「あ、もしもし。平気か?」
電話の相手は、付き合いが長い友達。いや、親友だった。
「平気…じゃない。どんなところかわからないが、地獄にいる気がするよ」
俺がハハッと笑うと親友もハハッと笑う。
「何だよ」
笑われたことにムッとして怒気の孕んだ声を出すと
「返事ができるなら大丈夫だなって、ホッとしたんだよ」
感情も出せてるしね。と親友は続ける。
「俺にとっては、オマエの悪いところは考えても出てこない。相手が悪かったと思って忘れろよ。今度、酒でも付き合うからさ」
な。と言われ、地獄から引き上げられる感覚を覚える。
「もちろん、奢ってくれるんだろ?」
先程までと違い、軽口が叩ける自分に驚きつつ
「仕方ねえなぁ」
笑ってくれる親友に感謝をして、電話を終えたのだった。

5/28/2023, 9:19:38 AM