生きる意味は?
と聞かれたところで、答えは出ない。
むしろ、答えがあるなら教えてほしい。
ただ、キミと出会って、穏やかで幸せな時間を過ごせているから、キミにもそう思ってもらえるように、生きていけたらいいなとは思う。
俺の首に、何かが触れる。それが、涙の雫だと気づいたのは、俺に抱きつくキミの腕の力が強まったのを感じたから。
「どうしたの?」
キミを優しく抱きしめ返し、そっと髪を撫でると
「…だってぇ…」
キミは微かに嗚咽を漏らす。そのまま落ち着くまで髪を撫で続けると
「…だってぇ、ホントに嬉しいの」
キミは俺の顔を見つめ笑顔を見せる。
「このままずっと一緒にいられたらいいな。って思ってたタイミングで指輪を渡されたらもう…」
そう言うと、止まったはずの雫がまた、キミの瞳からこぼれ落ちる。
「二人で幸せになろう」
俺はキミの頬に手を添え、優しく涙を拭ったのだった。
「もしも未来を見れるなら、見たいと思う?」
風呂上がり、キミと二人でビールを飲んでいたら、ほんのり顔を赤くしたキミがそんなことを言い出す。
「うーん、そうだなあ。別に見なくていいかなぁ」
グビッとビールを飲みちらりとキミを見ると、つまらなそうな顔をしている。
「何でそんな顔してるの?」
「だって、つまんないもん」
キミが唇を尖らせるので
「何がつまらないの?」
キミの唇を指で挟んでいたずらすると
「もう」
今度は頬をぷくっと膨らませる。
「だから、何がつまらないの?」
膨らんだ頬をつんつん突くと
「だって、見てみたいでしょ、未来」
頬を戻し、いじけた表情をする。
「見てみたいの?」
「そりゃ、見てみたいよ。子どもはいるのかなぁ。とか、家は建てたかなぁ。とか」
「ああ、なるほどね」
いじけたキミの髪を撫でると、キミの表情は和らぐ。
「ね、見てみたいでしょ」
キミにそう言われたけれど
「いや、別に」
俺の答えは変わらない。
「何で?」
不満そうに俺を見つめるキミに
「だってさ、未来なんて見なくても、キミと幸せに暮らしてる。ってわかりきってるからね」
俺は笑ってキスしたのだった。
無色の世界から一歩を踏み出す。
その先に待つのが楽しいことなら、Happyな色に。
辛く悲しいことなら、涙色に。
イライラムカムカするなら、怒りの色に。
ホッとするなら癒やしの色に。
出会う出来事によって、色はさまざまに変化する。
その変化を受け入れながら長い道を歩いて行こう。
辿り着いた終着点が、幸せな色で包まれていますように。そう願いながら。
キミと離れて、もう半年も経つんだね。キミにとっては、まだ半年かもしれないけれど。
お互いが新しい場所へ踏み出す。とわかったとき、移動時間が長時間になってもいい。キミと一緒にいたいから一緒に住もう。と言った僕に
「あなたがいないとダメな私になりたくないの。あなたがいなくても一人で歩ける。そう自覚できたら、一緒にいよう」
キミはそう言った。
「わかった。でも…」
離れてしまったら、心も離れてしまいそうで怖かった僕は
「もしキミと偶然に、ここではない、どこかで会えたなら、すぐにでも一緒にいてほしい」
キミの目を見つめ懇願すると
「きっと、そんなところで会えたなら運命だよね。わかった。約束する」
キミは頷いてくれる。
ここではない、どこかで会う。か、キミが僕と歩いてもいい。と思えるまで、僕はキミとの運命を信じて歩いて行くのだった。