紬(小説初心者)

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8/3/2024, 12:39:34 PM

【涙を拭って】(お題:目が覚めるまでに)

ぱっ、と目を開けた先に待っていたのは
物が何一つなく、ただ綺麗な青空と草原が
広がっている不思議な世界。

不審に思いつつも歩を進めてみる。
するとそこには見覚えのある後ろ姿があった。

(なん…で?)

私の声が届いたのだろうか。
こちらに振り向いて目をまんまるにして驚く君。

「…会いたかった」

こちらこそ、もう一度会えるなんて思ってもいなかった。
そう言おうとした…のだが私の声は届かなかった。
何故か口を自由に動かす事ができない。

「君はまだここに来ちゃいけないみたいだ。」

そう呟き苦笑いをする君。
君は少しずつ歩を進め、私から離れていく。

まって!行かないで…置いていかないで!

そんな願いも虚しく空へと消える。
ここはどこなんだろう…?意識だけがある状態。
勝手に時が進んでいき、自由に動くことも許されない。
まるでシナリオ通りに進んでいるかのような…

(…夢?)

わたしは今夢を見ている…?
せっかくまた会えたのに。最後にお別れぐらい…

せめて私の声が届きさえすれば…!

「待って…!」

この無機質な世界に私のか細い声が響く。
君がもう一度私の方へ振り向いた。あの時と同じ顔。
目は潤んでおり、心做しか悲しそうな顔をしている
もう…朝起きたら絶対枕濡れてんじゃんか
最悪~、洗濯するの大変なのに!
そう強がってしまう私もあの時と全然変わってない。
目が覚めるまでに、泣きやんでるといいな…笑
…話したい事は沢山ある、でも一つだけ。

お願い神様、最後にこれだけ伝えさせてください。

「世界でいちばん、愛しています。」

目から溢れだす涙を拭い、そんな言葉を伝える。

君は何も言わない、動こうとすらしない。
ただまっすぐな笑顔で私を見つめ、
この夢が覚めるのを待っていたのだった─

5/26/2024, 11:45:23 AM

【冷めた珈琲】(お題:月に願いを)

1つだけ何かが叶うならば皆なら何を願う?
昔読んだ本にもそんな導入があったような気がする。
確かその本の主人公は
「友達が欲しい」って願ったんだっけ。

「願い事、ねぇ…」

さっき淹れたばかりのコーヒーを手に取り口に含む。
知人から凄く美味しいから飲んでみなと
おすすめされたコーヒーなのだが…

「…相変わらずコーヒーは飲めないや」

私には何故この苦さが美味しいのかわからない。
ミルクとシュガーを足し再度口に含む。

「ん、やっぱり甘いのが1番。」

…ねぇ、前みたいに
『こんなのも飲めないの?』って煽ってよ。

『お子ちゃまだね』って笑ってよ。

怒った私を見て『ごめんごめん!笑』って謝ってよ

「なーんて、叶うわけないのにね。」

とっくに冷めてしまったコーヒーと
私達の関係はどこか似ているような気がした ─

5/25/2024, 2:16:54 PM

「雨嫌いなんだよね。髪の毛うねるしー笑」

そんな事を言う君の横で氷菓を口に運ぶ僕。

「早く夏が来て欲しいなぁ…」

「あ!そうだ。再来週の花火大会、一緒に行かない?」

思い出したかのように彼女は目をぱあっと輝かせる。

「花火大会…?あぁ、隣県の?」

「そう!あそこの花火綺麗なんだってぇー!」

「そうなんだ、行ったことないな。」

携帯のカレンダーアプリを開き予定を確認する。

「特に予定もないし僕は大丈夫だよ。」

「そ!なら良かった!寝坊すんなよー?」

「こっちのセリフなんだけど…」

この日は一日中雨が降り止まなかった。

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「ゴホッゴホッ…」

「大丈夫?…じゃないよね」

「まあ…でも薬飲んで寝たからだいぶマシになったよ」

「そっか、なら良かった。」

「その…ごめんね?花火大会…私のせいで行けなくて。」

「大丈夫だよ。風邪ひいちゃったのは仕方ない事だし。」

雨は降り止まない。少し沈黙が流れる。
外をぼうっと見つめている君と窓越しに目が合った。
目を逸らし俯いた彼女に
なんと声をかければいいかが分からなかった。
雨がやんできたのだろうか。さっきまで
五月蝿く感じていた雑音が静まった気がする。
その瞬間ふと目に入ったのは七色の光。

「ね、みて」

「…ん?」

「ほら、綺麗だよ」

「…!」

「ほんとだ。すごく綺麗。」

雨上がり。君が綺麗だと言った虹と
いつもの変わらない街の景色。

「雨、僕は好きかも」

「ふふ、奇遇だね。私も!」

そういって笑い合える時間が何よりも好き。