紬(小説初心者)

Open App

「雨嫌いなんだよね。髪の毛うねるしー笑」

そんな事を言う君の横で氷菓を口に運ぶ僕。

「早く夏が来て欲しいなぁ…」

「あ!そうだ。再来週の花火大会、一緒に行かない?」

思い出したかのように彼女は目をぱあっと輝かせる。

「花火大会…?あぁ、隣県の?」

「そう!あそこの花火綺麗なんだってぇー!」

「そうなんだ、行ったことないな。」

携帯のカレンダーアプリを開き予定を確認する。

「特に予定もないし僕は大丈夫だよ。」

「そ!なら良かった!寝坊すんなよー?」

「こっちのセリフなんだけど…」

この日は一日中雨が降り止まなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「ゴホッゴホッ…」

「大丈夫?…じゃないよね」

「まあ…でも薬飲んで寝たからだいぶマシになったよ」

「そっか、なら良かった。」

「その…ごめんね?花火大会…私のせいで行けなくて。」

「大丈夫だよ。風邪ひいちゃったのは仕方ない事だし。」

雨は降り止まない。少し沈黙が流れる。
外をぼうっと見つめている君と窓越しに目が合った。
目を逸らし俯いた彼女に
なんと声をかければいいかが分からなかった。
雨がやんできたのだろうか。さっきまで
五月蝿く感じていた雑音が静まった気がする。
その瞬間ふと目に入ったのは七色の光。

「ね、みて」

「…ん?」

「ほら、綺麗だよ」

「…!」

「ほんとだ。すごく綺麗。」

雨上がり。君が綺麗だと言った虹と
いつもの変わらない街の景色。

「雨、僕は好きかも」

「ふふ、奇遇だね。私も!」

そういって笑い合える時間が何よりも好き。

5/25/2024, 2:16:54 PM