紬(小説初心者)

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【涙を拭って】(お題:目が覚めるまでに)

ぱっ、と目を開けた先に待っていたのは
物が何一つなく、ただ綺麗な青空と草原が
広がっている不思議な世界。

不審に思いつつも歩を進めてみる。
するとそこには見覚えのある後ろ姿があった。

(なん…で?)

私の声が届いたのだろうか。
こちらに振り向いて目をまんまるにして驚く君。

「…会いたかった」

こちらこそ、もう一度会えるなんて思ってもいなかった。
そう言おうとした…のだが私の声は届かなかった。
何故か口を自由に動かす事ができない。

「君はまだここに来ちゃいけないみたいだ。」

そう呟き苦笑いをする君。
君は少しずつ歩を進め、私から離れていく。

まって!行かないで…置いていかないで!

そんな願いも虚しく空へと消える。
ここはどこなんだろう…?意識だけがある状態。
勝手に時が進んでいき、自由に動くことも許されない。
まるでシナリオ通りに進んでいるかのような…

(…夢?)

わたしは今夢を見ている…?
せっかくまた会えたのに。最後にお別れぐらい…

せめて私の声が届きさえすれば…!

「待って…!」

この無機質な世界に私のか細い声が響く。
君がもう一度私の方へ振り向いた。あの時と同じ顔。
目は潤んでおり、心做しか悲しそうな顔をしている
もう…朝起きたら絶対枕濡れてんじゃんか
最悪~、洗濯するの大変なのに!
そう強がってしまう私もあの時と全然変わってない。
目が覚めるまでに、泣きやんでるといいな…笑
…話したい事は沢山ある、でも一つだけ。

お願い神様、最後にこれだけ伝えさせてください。

「世界でいちばん、愛しています。」

目から溢れだす涙を拭い、そんな言葉を伝える。

君は何も言わない、動こうとすらしない。
ただまっすぐな笑顔で私を見つめ、
この夢が覚めるのを待っていたのだった─

8/3/2024, 12:39:34 PM