『夜空を越えて』
とても近くにあるように見える夜空に手を伸ばした。
当たり前だけど、
星に届くはずはなくて、掴むことも出来なかった。
私とあなたの距離は、
少なくとも夜空よりは近いはずなのに、
手を伸ばしても、伸ばしても、届かない。
何故か夜空よりも遠くにあるように感じる。
夜空よりも遠くにいる何光年も先のあなたへ、
太陽に照らされた月の光のような、
そんな光をあなたへ送る。
『ぬくもりの記憶』
どうしても私の記憶から消えることはない。
おそらく、忘れることが出来ない。
今はもうないぬくもりは、
私を暖めてくれる時もあれば、私を苦しめる時もある。
早く忘れてしまいたいと思う時もあれば、
ずっと私の記憶に居続けて欲しいと思う時もある。
寒い日に手を繋いで帰ることも、
少し大きめのベッドにふたりで寝ることも、
少し遅くなる日 には、
温かいご飯を作っていてくれたことも、
全部全部、私の中に染み付いている。
どうして急にいなくなってしまったの?
どうしてそちらに行ってしまったの?
私をひとり置いて行かないで。
私も連れて行って。
『凍える指先』
毎年毎年、冬になるとどうしても指先が冷たくなる。
全然暖かくならなくて、カイロが必須だった。
でもね、
去年からはカイロがなくても
暖かく過ごせるようになったの。
ね、これからもずーっと一緒にいようね。
『雪原の先へ』
あたり一面真っ白な世界。
私がひとり、立っていて、
これまで歩いてきた足跡も全て雪で覆われていた。
何も目指していない、どこも探していない。
どこに辿り着くかも分からない。
視界は全部白色で埋め尽くされていて、
木も建物も太陽も全てがない世界。
私が向かっている先には何かあるのだろうか。
どこからか音楽が聴こえてきて、
暖かい光に当たっているかのような空間が見える。
私が望むものが、そこにはあるのだろうか。
『白い吐息』
最近、毎朝見かけるようになった。
あなたは私がいることに
気付いてるのか分からないけれど。
今日は斜め前にあなたを見つけた。
視界にいるだけで嬉しかった。
暖かそうなマフラーにコートを着ていた。
それでも寒そうにしていて、白い息が目立っていた。
もちろん私の息も、冷たくて真っ白だった。