【街へ】
街へ行こう。君に会うために。
ここしばらく、君と会うことが出来ていない。
お互い成人して君は街へ行ってしまった。
僕は家業を継ぐため、ここに残った。
高校時代は楽しかったな。
ずっと一緒だった。
君と離れてから約1年。
君は僕の事を覚えているのだろうか。
もしかしたら他にいい人を見つけているのかもしれないな。
街には僕なんかよりずっといい人がいるだろうから。
君と約束したわけでもない。
ただ、またね、と。それだけ。
それだけなのに。
僕は君を思い続けている。
もし、君が僕の事を覚えていて。
まだ、好きだと言ってくれるなら。
期待、しても、いいかな。
一途だった君を信じて。
「今、会いに行きます」
るあ
【優しさ】
「優しい、ですね」
ふわりと微笑みながら、君が言う。
君の目には僕が優しく映っているのか。
違うよ。
僕は優しくなんかない。
君は上辺だけの、造られた優しさに騙されてしまっているんだよ。
きっと、僕は。
優しさを知らない。
幼い頃から愛情を受けずに育った。
愛情とは何か。優しさとは何か。
大人になった今でも分からない。
僕は君が好きだ、そう思う。
好きとか、嫌いとか、分からないから、曖昧なんだ。ごめん。
僕は僕なりに君に愛を伝えているつもりだ。
伝わっているかな。
真似しただけの優しさに、暖かさなんてあるのだろうか。
「大好きです」
ギュッと抱きつきながら言ってくる君。
とても、とても、暖かい。
こんな僕なんかより。
ずっとずっと、優しさに溢れている人が居るじゃないか。
優しい君へ。
僕の未熟な愛を受け取ってください。
るあ
【安心と不安】
あなたといると本当に安心する。
隣に居るだけなのに心がポカポカとしてくる。
今だってそうだ。
離れたく無くなってしまうくらい好きなのだ。
だからこそ、不安もある。
もし、離ればなれになってしまったら。
一緒に居られなくなってしまったら。
僕はどうなってしまうのだろう。
不安でおかしくなってしまうかもしれない。
そんなとりとめの無いことをぐるぐると考えていると涙が出てきた。
おかしいな。
横にはあなたが居るのに。
「、ッぐすっ、」
「、、泣いてる?」
バレてしまった。
ぐちゃぐちゃな顔を見られるのが嫌で、顔を背ける。
「、ッ僕を、捨てないで、ください、」
必死だった。
頭の中はパニックで、そのくらいしか言うことが出来なかった。
ただ、それだけでも。
あなたには伝わったようだ。
僕の事をギュッと抱き締めてキス、された。
「、、捨てるわけ、ないから、」
「、うんッ、」
「大好き、」
僕が思っていたより想われていたようだ。
やっぱりあなたの隣は安心するなぁ。
るあ
【逆光】
毎日、あなたの事を考える。
きっと僕はもう戻れない。
あなたが居ないから、こんなに辛くて、悲しくて。
僕もすぐいきますから。
部屋を綺麗にしていこうと片付けていたら、ふと棚に仕舞いこんでいたカメラが目に入る。
あの、カメラは。
あなたに進められて初めて買ったカメラだ。
使ったのは1度だけだったか。
あなたと出掛けたときに1枚撮ったんだったっけ。
そういえば、写真を確認していないかもしれない。
気になってしまったので、片付けを中断しカメラに手を伸ばす。
電源を入れ中を覗き込む。
そこには、あなたの姿があった。
思わず涙が滲んだ。
カメラの画面に映るあなたの姿は、逆光で黒くなっており、表情があまり見えなかった。
あの時、もっとしっかり撮っていたら良かった。
あなたに撮り方を教わってでも撮っておくべきだった。
逆光で、黒くなってしまったあなたを見つめながら思う。
「今、行きますね。」
「、待ってて、ください」
るあ
【こんな夢を見た】
「、ぇ、と...好き、です、///」
目の前にいるこいつは、俺の1つ下の幼なじみ兼、俺の好きな人である。
そんなこいつが頬を赤く染めながら俺に、好きだ、と言っている。
告白と受け取って良いのだろうか。
悩んでいるうちに、あいつの目に涙が滲んできた。
どうやら俺の無言を拒否だと受け取ったようだ。
「、ッぅ、ごめ、なさッ、わすれて、くださいッ」
えぐえぐと泣きながら謝る姿でさえ、可愛いと思う俺は末期だろう。
体が勝手に動き、目の前のこいつを抱き締める。
「、俺も、好き、、勘違い、するな」
「、ッほんと、ですか、ッ?」
肯定の意思としてキスをしようと、顔を近付ける。
-唇が触れる直前で目が覚めた。
こんな夢を見たのは久しぶりか。
懐かしい記憶が次々と蘇る。
今、俺の横ですやすやと心地良さそうに眠る、恋人との思い出が。
「大好き」
心なしか、すぅすぅと眠るその顔が、微笑んだような気がした。
るあ