握った手を中心にくるり180度。
お互いの位置を入れ替えて、やっとわかる事もあった。
もう一度くるり。
少しだけなにかが変わって、ほぼ元通りに戻ってこれた。
手を取り歩み寄るのが怖い時もあるけれど。
まるであさっての方向に離れていくのはもっと嫌。
2
カーテンレールの上で渋滞を作る猫みたいに
柔軟さと超バランスで強引に乗り越えられたら
なにも気にせずにくっついてぬくぬくと
「すれ違い」
日に透ける紅葉の赤が1番きれいに見えるとつぶやいて、動かなくなる君。
大通りのベンチはもうすぐしまわれる季節になった。
バスの中から街路樹に留まる寄生木を見つける目ざとさと、裸眼視力は0.1の極端な性能差を両立させて、分厚いレンズに隠した大きな瞳。
見たいものしか目に入らない。
目が合うたびに一回一回笑ってくれるのがたまらない。
こっちを思い出してくれるまで、おりこうさんで君を待つ。
「秋晴れ」
ルーズリーフとシャープペンシル、消しゴムが、言葉をつづる道具でした。
長い事、上手く使いこなす事が出来なくなりました。
書き込むのはほとんど住所名前電話番号。まるで判子のようでした。
最近はスマホに直接打ち込むので、脳を使う部分が大分変わった気がします。
一度平仮名で入力して変換する手間が悪さをするのかしっくりきていません。
昔だって記憶の怪しい漢字は携帯で変換して、確認しながら書いたもんなのに。
それでも思い出しました。
言葉は何度使っても無くならない材料です。
どこにいても頭の中でこねくり回し遊んだのを覚えています。
何度でも、削って付け足して書き直して全削除すら簡単に出来るんですから、あせることはないのです。
「忘れたくても忘れられない」
消防車の給油口の多くは車体の上にあり、ガソリンスタンドの店員である僕は数少ない消防車の上に登った事のある一般人です。危険物取扱資格は持っていますが。
給油していると、車体や備品のチェックを済ませた消防士さん達が登ってきて囲まれます。円陣を組む感じです。
給油が終わるまで消防士さんたちが雑談したりしてるわけですが、そんな時伝統的ジャパニーズパワハラ指導の片鱗を感じることがあります。
僕の偏見の可能性もおおいにあります。
皆さん普通のおじさんお兄さんと一見変わりませんが、目つきが一瞬で変わったりします。
日本の平和と安全を守ってくれる人達に感謝です。
「鋭い眼差し」
※書いた人はもちろん消防士でもGS店員でもありません
バスを待つ。
よく晴れた空を見上げると、視界の中で一羽の鳥がビルのてっぺんから飛び立った。
珍しくもない。
いつものように時刻通りにくる事のないバスが、昨日は5分、一昨日は10分遅れたほどの違いでしかなかった。
今日はすでに3分過ぎているのに、55系のバスはまだ来ない。
天高く、なんて言われる秋。
綺麗な円を描いて旋回上昇を続ける小さな黒い点が、あの鳥だったと気がついた。
隊列を組むでなく、単独の渡り鳥。
遠い旅路をつなぐ、はじめの一歩の瞬間だった。
いってらっしゃい。
そこからでもまだ見えない地平線の向こうまで。
「高く高く」