人生に於いての努力とは常に停滞の努力だ。
私達は決して先に進むことなく、ずるずると滑り落ちるのを耐えるのみである。

人間が何時まで経っても過去に到達できないのはその為で、
過去というのは私達が追い越して行くものではなく、追い越されるものなのだ。

もし私達の後方に過去があるとするならば、何故この地道な滑落が功を奏さない？ 何故君と見た景色に、これだけの執心を覚えると言うのだ？

手を繋いで歩いた並木道の木漏れ日は、骨身を削った一人の男の成れの果てだ。結婚とは事件性のない誘拐に過ぎない。

現実逃避？ 私の属してきた現実が、一体どこにあるのだ？

最愛のものに裏切られたいという願望⸺最低こそが私のまほろばであり、最上の解決法なのだ。

書き続けること。

素封家の作家が、叶わぬ夢を追う者達へ託宣を下した。
ところで、もし詩というものが間に合わせの自殺でしかないとするのなら、書き続けた先に待つ廃墟と化した思弁の果てで、詩人は一体何を求めるのだ？