初めて出会ったのは、小学校の頃。
かくれんぼ。ああ、懐かしい。
1人だけ、置いてかれたっけ?
古びてすっかり色褪せた鳥居に、
夕方5時のチャイム。
泣き出しそうな、私の元へ君が来た。
——泣かないで。
まだ幼かった少し年上の神様。
人間でないことを知ったのは、
私の世界で常識への拒絶が始まったころ。
私を少し大人にしてしまうくらいの、月日が経った。
神様。背、伸びたね。それも、急に。
——そんなこと。
置いてく?神様も。
怖いんだけど。
——そんなことはないさ。
別れは人を、深くする。
良くも、悪くも。
そう言って、心の準備もさせてもらえない程、
貴方は急速な老いを迎えた。
そして、別れの時が訪れた。
——さようなら。
今日も、君に会いたくて。
私は、自らの閉ざされた日記を開く。
私は神隠しにあった女。
桜が綺麗だった。
そして、神と出会う。
——ここには、誰もいないね。
もう、信仰してくれる人間も、減ってしまった。
私は天に帰えらねばならん。
そう思った矢先、出会えた最後の人間じゃ。
神として、最期のねがい、かなえたもう。
——誰もいないね。
寂しいのは苦手でのう。賑やかなのが、合ってる。
——じゃあ、賑やかな所へ、神様。
ここは、きっと寂しいから。
私も、寂しいから。
私の為に願ってくれたのか。ありがとう。さようなら。
閉ざされた日記 作者:木枯らし
私の気は枯れたまま。
行かないでと言えず、そのまま。
あの時、どんな気持ちだったのだろうか
分からないなりに、忘れないよう、日記に書いた。
閉ざされた日記の中に、閉ざされた心。
今は、どこの空で誰をみている?
木が枯れてしまった。
私の木が。
私の水となる、あの人の存在や。言葉や。
枯れてしまった。
いつか、桜が咲く季節になっても私の気は枯れたまま。
私の木は枯れたままなのだ。
‘’木枯らし’’
高校三年生の春。
あの時の選択を今も悔いている。
あの人の背中を追わなかったこと。
見送ってしまったこと。
それはきっと、自分の中のプライド。
プライドは、時に凶器である。
プライドは、時に誇りでもあり、埃でもある。
その当時の私にとっては、誇り。
今の私にとっては、ただの埃。
人生は長い。
誰かを思いやるプライドにこそ真価は宿る。
あの時、追いかけてこそ自分。
頭を下げてこそ自分だと、青い私は気付かぬまま。
これはきっと、後悔というよりも、嫉妬。
あの時選択できた未来への。
自分への嫉妬だったや。そうやろ。
新しい未来に、あの人はいない。
ならせめて、私の中で枯れた木を。
私のプライドという名の埃を。
誰かが水をあげてくれるその日まで、私は木枯らし。