「記憶の海」
深夜1時。
ベッドの上で寝返りを打つ。
天井を見つめて、今日も頭の中に眠る記憶と戦う。
あのとき、話の内容に対する反応を間違えた後悔
あのとき、調子に乗って喋りすぎた反省
あのとき、会話のテンポを止めてしまった後悔
一度底に沈めたはずの記憶までも蘇ってくる。
今日も記憶の海に潜る。自傷行為だよなあとは思う。
けど不安になることをやめられない。
どんどん深く溺れていく。
いつか浮上してこれなくなりそうな恐怖と、もう記憶と一緒に沈んでしまった方がラクかもしれないという思いが共存する。
今日も、朝が来ることを願って。
「ただ君だけ」
授業の5分前に教室に入る。おはよーと声をかけると
「おはよー、えなんか今日盛れてんじゃん可愛い!」と友達に褒められる。
そりゃそうだ、いつもの2倍時間かけてんだからという
本音は仕舞って「嬉しい〜ありがとう!」と伝える。
今日は週に1回だけの貴方と授業が被る日。
いつものジャージやスウェットは家で待機させ、着飾ったわたしで貴方に会いにいく。
いつもより早起きしたのも、
昨日パックをしたのも、
髪を巻いているのも、全部全部ただ君だけのため。
ちらりと貴方の視線を感じた、気がした。
「未来への船」
私は貴方を見ているけれど、
貴方は私を見ることは無い。
貴方は私以外の人を船に乗せようとしている。
自分の未来へ共に連れていこうと必死だ。
わたしはこんなに近くにいるのに誘ってもらえない。
私は船には乗れず、港で旗を振り応援するしかない。
貴方に覚えてもらえる方法はただそれだけ。
「静かなる森へ」
がたんがたん、がたんがたん
私は電車に揺られていた。
窓の外の景色は、視力が上がりそうな程の緑一色。
相変わらず田んぼしかないなあ、とぼんやり思う。
繊細で気にしいな性格の私は、新学期の慌ただしい生活にすっかり心を病んでしまった。
それを心配した両親が気晴らしになればと遠方の祖母宅に送ったのだ。
いらっしゃい、としわしわの笑顔に迎えられ家に入る。当然祖母以外に知り合いはいないので、することがなくて近所を散歩してみることにした。
平坦な田舎道を歩いているうちに、荒んだ心がゆっくり和らいでいくのを感じた。
自然に囲まれたこの場所は、静かで居心地がいい。
誰の目も気にすることなく、それでいて優しく見守られているようで温かくなった。
また嫌なことがあればこの「静かなる森」に来よう、と心に決めた。
かなり無意識だったけど思い出のマーニーみたいになってしまった...オマージュということで...
「夢を描け」
先生が言った。貴方の夢は何ですか、と。
少し考えて私は答えた。特にないです、と。
その後、
本当は考えてることがあるんでしょうと言われた。
先生には、私が筆を持ちたがっていることもお見通しだったようだ。
美大も考えたことはあるが、多額のお金をかけ、たゆまぬ努力を続けたとしても報われるとは限らない、きびひい世界だと分かっていたから、諦めていた。
「口に出さないと叶わないよ。まず夢を描く勇気を持たねばいけない。」
その言葉がひどく印象的だった。