突然の君の訪問
突然の君の訪問。半年前に別れた彼女。あの時は自暴自棄になっていた。仕事も上手くいかず、イライラして飲みに行っては友達と喧嘩になり、彼女にも別れたいって言ってしまった。後から後悔しても、言ってしまったことは無しにはできず、諦めていた。
その彼女が、
「あんた昨日の夜中の電話は何なのよ!俺はお前が好きだ!忘れられない。もう一度寄りを戻したい。グジグジグジグジずーとそんなことを言って泣いて、、、。
だいたい、あんたが別れようって言ったのよ。お前となんかもう会いたくないって、、、。それを今更なんなのよ、、、私があれからどんな気持ちでいたかも知らないで、、、。ひどすぎる、、ひどすぎるよ。」
彼女が泣きじゃくる。
昨日?覚えていない。仕事終わりに酒を飲んで帰って来たのは覚えてる。
俺、こいつに電話したのか。しかも泣いて、、、。
「ユキ、ごめんな。ユキに酷いこと言っちゃって、、、。俺どうかしてたわ。別れてわかったよ。ユキがどれほど大切かって、、、。
許してくれないかもしれないけど、やり直したい。」
彼女は
「許すわけないじゃん。あんな酷いこと言われて、、、。おまえ怒ると、ひょっとこみたいでキモイから別れたいって。ひどすぎるよ」
俺、そんなこと言ったんだ笑
そりゃ酷いな。忘れてたわ。
ひょっとこって、、、笑。
でも少し似ているんだよなぁ。ひょっとこに、、、。でも、そんなところも可愛いんだけどな〜。
「ユキ、もう一度やり直そう笑」
「あんたちょっと笑ってない?」
ほらほら怒らないの。
またひょっとこになっちゃうよ笑笑
雨に佇む
昨日、妹の日記帳を見てしまった。その日記帳には兄である僕への想いが綴られていた。その日記帳を読んでいた僕に、うたた寝をしていた妹が気づき、可哀想なほど動揺していた。そんな妹を見て僕は妹を抱きしめた。後は何でそんな事をしてしまったか自分でもわからない。気がつくと妹を抱いていた。
そんな事ありえない、やってはいけない事だ。夜遅くに帰ってきた、両親の顔を見ることができなかった。
直ぐに家を出なければいけない。誰にも言えない。
妹をこれ以上傷つけることはできない。 あの時、何故、僕は妹を抱いてしまったのか。
大学の帰り、家に帰る事ができず雨に佇む。 行き交う人が僕を避け足早に通り過ぎる。
妹を愛してるなんて言えない。言っちゃいけない。
雨が激しくなってきた。だけど雨は何も流してくれない。
僕の罪も愛も、、、。
(昨日の私の日記帳に続くストーリー、よかったら昨日のも読んで下さい)
私の日記帳
私の日記帳にはある秘密が書かれている。
私は4人家族で、両親と三つ年上の兄がいる。兄は大学一年生で私は高校生。両親は共稼ぎで私が高校入学してからは残業も多くなり、私が兄の分の食事を作ることもあった。兄は頭も良くスポーツ万能で、サッカーをやっている。小さい頃から勉強を教えてくれたり、泣き虫だった私をいつも笑わせて励ましてくれた。
私の秘密とは、兄を兄としてではなく1人の男として愛してる。私の日記帳には兄への想いが綴られている。兄と二人っきりになりたいから、両親が帰ってこない事を願っている。兄と手を繋ぎたい、甘えたい、キスがしたい。そして、抱かれたい。
そんな想いが日記帳に書かれている。
その日、両親は二人とも残業で遅くなると連絡がきた。私は兄と食事をして、それぞれの部屋に戻っていく。いつものように日記帳に兄への想いを書いていると、いつの間にか眠ってしまった。
人の気配がして目を覚ますと横に兄が立っていて、私の日記を読んでいた。
一瞬で血の気が引いた。言葉が出でこない。立つこともできず、手が小刻みに震えている。もうおしまいだ。兄は私を軽蔑するだろう。一緒に生活できないと、この家を出で行くかもしれない。私はこれからどうやって家族と生活していけばいいのか、死んでしまいたい。
その時、兄がそっと私を抱きしめ、私の目をじっとみると優しく唇を重ねてくれた。それからゆっくりと二人はベッドに入り抱き合った。
しばらくして両親が帰ってきた。リビングで仲良く映画を観ている二人を見て、
「二人とも明日は学校でしょ。早く寝なさい」
と言う。
私達はそれぞれの部屋に戻る。
私の日記帳にはこれから二人の愛が綴られていくことになるだろう。
向かい合わせ
昔、私がまだ小学生低学年の頃、両親と妹で鹿児島県の祖母の家に行った。 東京から鹿児島県は本当に遠かったけれど、向かい合わせに座る電車はとても楽しかった。
新幹線も座席をくるっと回して向かい合わせにする。お弁当や冷凍みかん、お茶を買って家族4人で顔を見ながら食べるのは最高に楽しかった。
ある年は新幹線を使わずに寝台車に乗った。寝台車は最初から座席は向かい合わせになっていて、夜になると車掌さんがベットを作りに来てくれた。夜、カーテンを開けて見る外は真っ暗で、駅が異様に明るかったのを覚えている。
あれから何十年も経ったけれど、今だに向かい合わせの電車に乗ると嬉しくなる。でも、両親も妹もいない向かい合わせの席は、知らない人と向かい合わせになってしまう。
それは少し嫌だなぁ。
やっぱり向かい合わせの電車は家族と乗るのが一番だ!
やるせない気持ち
僕が勤めている会社はいわゆるブラック企業である。残業は130時間を優に超える。
そんな会社に今年も新人が入ってきた。この子も半年で辞めるだろうと思っていた。しかし、真面目な彼女は、どんなに帰りが遅くなっても頼まれた仕事は文句も言わずにやっていた。
嫌な顔をしないので、先輩からは後から後から仕事を頼まれる。
いつも「わかりました」と返事をし、黙ってその仕事をやる。
彼女を見ているとやるせない気持ちになる。
なのに僕は黙って見てるいるだけだ。彼女を助けると自分の残業が増えてしまうと思ってしまう。
彼女はみるみるうちに痩せていった。口数も少なくなり、目も虚である。それでも、上司は何も言わない。
そしてある日、、、。
彼女はマンションの屋上から飛び降りた。自殺だった。
上層部から上司は呼ばれたがそれで終わった。何が話し合われたかはわからないが、何事もなかったようにまた同じ日々が続く。
彼女に声さえかけれなかった自分にも罪はあるが、自分が壊れないための自己防衛だと自分に思い込ませる。
こんな風に思っている人は、この世の中には沢山いるだろう。きっと自分を守ることに皆んな精一杯だ。
何が悪いんだと思うが、自分の心が叫んで壊れていくのがわかる。
今日も残業で終わるのは夜中だろう。
仕事が終わったら、彼女が飛び降りたマンションに行ってみようか、、、。