【雨と君】
放課後の教室。
外は雨が降っていた。
突然降りだした雨。
二人とも傘を持っておらず
仕方がないので教室でやり過ごすことにした。
「雨、止まないね」
「そうだね」
「もしこのまま止まなかったらどうしようか」
「えっ?」
「君ならどうする?」
「そんなの…」
困ってしまう。
「まぁ、そんなことあるはずないんだけどね」
「うん…」
そう言って君は窓の外を見上げる。
相変わらず外は雨が降っている。
「このまま時が止まれば良いのに。
そうしたら…」
「?」
「君とずっと一緒にいられるのにね」
「!?」
思わず、椅子から落ちそうになった。
そんことあるはずないのに。
君は笑うとまた窓の外を見上げた。
「それって…」
「あっ」
「えっ!?」
「雨、止んだよ!」
そう言って君は立ち上がる。
僕もつられて窓の外を見た。
さっきのどしゃ降りが嘘のように
空は晴れやかな光が降りていた。
「…」
これじゃあ、本当に時が止まったみたいだ。
明後日にはもう君はここにはいない。
両親の離婚で君は遠くに転校してしまう。
「…手紙を書くよ」
「!?本当に?」
「うん。僕も君とずっと一緒にいたいから」
「!?」
そう返せば、君は顔を紅くして照れ臭そうに笑った。
【誰もいない教室】
放課後。
それぞれ部活なり
アルバイトなりと
教室には誰もいなくなっていた
夏が終わる
日が暮れ始めた空が
紅く染まっていく
「ねえ」
「?」
「早く帰らないと」
「そうだね」
知らない女子生徒から声をかけられた。
「(綺麗な子)」
長い黒髪を滴(たら)した
まるでお人形のような女の子。
あれ?そう言えばあの制服って…
私は荷物を持って逃げるように教室を飛び出した。
「(だってあれは)」
創業当時の制服にそっくりだった。
今の制服は新しいデザインに変わっていた。
だからあの制服の生徒が居るわけはなかった。
私は後ろを振り返らず
ただただ家路を急いだのだ。
【信号】
点滅する信号の光
時刻は深夜を回っている
どうしようもない衝動が
僕のからだの中を駆け巡る
駆け出したいこの気持ち
背中には大荷物
星の輝きを目印に
目的の場所を目指す
そこには夢とロマンが広がっているだろう
【言い出せなかった「 」】
私の元から去っていく背中
その背中を横目に
私は何も言えなかった
今思えばたとえもう
どうしようもなかったとしても
"行かないで"
そう言えば良かった
【ページをめくる】
ページをめくる
その手は止まらない
だって
色々な世界がそこには
あって
知らない世界が
そこには広がっていた
覗けば覗く程
知れば知る程
それは僕の世界を拡げていった
誰も知らない
それでいて
誰かは知っている
そんな物語がそこにはあった