【花の香りと共に】
思い出すのは、君から溢れくる花の香り。
何処かでまた会えるだろうか?
名前も顔も知らない。
ただ一瞬通り過ぎただけのことでしかないのに。
それでも会いたいと願えば想いが溢れる。
硝子(ガラス)の中に散りばめた色とりどりの華やぐ花達。
そこにゆっくりと熱湯を注いでいく、香りがたちまち鼻腔を擽(くすぐ)った。
そして、花開く。
これで少しは君を感じることが出来るだろうか。
花の香りと共に。
【心のざわめき】11
双子に掴まれてかれこれの時間になる。
「ねえ、そろそろ離してくれない?」
ディ·ダム「「やだ!」」
「え~…」
駄目元で請うも即座に却下を喰らう。
「私これから行かなきゃいけないところがあるの。だからお願い離して?」
ディ·ダム「「…」」
う~ん。そんな捨てられた仔犬のような目で見上げないで。
絶対自分の可愛さ分かっててやってるだろ。
ディ「…なら、また戻ってくるって約束してくれる?」
「え?」
ダム「約束してくれるなら解放してあげる」
「…」
約束。何て容易くしていいものか?
何故なら私はここの世界の住人ではない。
ただの他所から来た異邦者(いほうもの)でしかないのだ。
だけど。
「…いいわ。約束する」
私は容易く約束をしてしまった。
きっともう会うことも、戻ってくるという保証もないまま。
ディ·ダム「「本当!?」」
「ええ」
それでも私は取り繕った笑顔を浮かべた。
心の奥がざわめいたのとチクりと胸が痛んだ気がした。
「きっとまた会いましょうね」
私は双子に別れを告げ、先を進み始めた。
【君を探して】
頭の中に声が響いている。
誰ともわからない懐かしい声が。
私はまだ探している。
諦めていない。
2つに別れた私の半身。
この世界の何処かにきっといる。
私は一人じゃない。
あなたがいると思うと
私はまだ頑張れるよ。
【透明】
不透明なもの程手に入れたい。
不確かなもの程気になってしまうのは。
私がもう透明ではなくなってしまったからなのか?
純粋ではいられない。
生粋なままでは生きていけない。
不純物の塊。
【終わり、また初まる、】10
「…一体いつ終わるのかしら?」
さっきから双子たちはどのくらい経ったのかずっと歌ったり踊ったりを繰り返している。
私の存在など当に忘れているようだ。
ダム「あっ、つい楽しくてお姉さんを置いてきぼりにしちゃったね!ディ?」
ディ「そうだね、ダム!悪いことしちゃったね…」
ピタリと踊るのを止め、双子はしょぼんと項垂(うなだ)れた。
「そんな項垂れなくても大丈夫よ?」
何だかいたたまれなくなってそう言って、私は双子の頭を撫でた。
ディ「わぁっ、お姉さんって優しいんだね!」
ダム「本当!僕達お姉さんのこと大好きになったよ!」
「あらあら」
双子はニコニコと私に抱き付いてきた。
私は苦笑したもののこんな可愛い子達に抱き付かれて嬉しくないわけがなかった。
私も二人を抱き締める。
「ありがとう二人とも。私先を急いでるの。だからそろそろ行かないと」
名残惜しさを残し、私は双子から離れ踵を返した。
ディ·ダム「「待って!」」
そう言うかいなか私は後ろから引っ張られた。