【終わらせないで】
つい、こないだの話だ。
絶賛、片想い中の恋。
叶う確率はどのくらい残されているだろうか?
その人を目で追うのはいつも私ばかり。
あっちは私のことなんてなんとも思ってない。
だから、たった数分だろうと私には貴重で幸せな時間なのに。
今回何故か、いつも確認されることをすっ飛ばし早々と切り上げられそうになった。
私の心中穏やかではいられなくなり思うのは、
お願いだから、終わらせないで!
【愛情】
愛情。敬愛。恩愛。慈愛。純愛。信愛。溺愛。
愛を文字だけで表現し伝えることは中々難しい。だって、言葉以上にあなたに愛を伝える術は解らないのだから。
【微熱】
会うたび、貴方は格好良くなって私の瞳には映ってしまう。いつの間にか私の頬は熱く朱みを帯びる。だけど、この気持ちが恋なのかただの尊敬なのか今になって分からなくなってた。
どうして?
あんなにも好きが溢れていたのに…。
貴方の心が解らないのが不安なの?
どうせ私なんて好きになってもらえないと思うから?
私はただの実験対象でしかないの?
最近、貴方が格好良く見えるのは貴方が私ではない誰かに心を奪われているからだと思った。
それを考えると私の心は落ち着かない。
貴方の気持ちが知りたいです。
そうすればきっと私のこの気持ちも救われるのだろう。
【太陽の下で】
太陽の下を貴方と三人仲良く手を繋いで歩いていくことが出来たならどんなに幸せなことなんでしょう。
私が犯した罪は償っても償いきれない程貴方を苦しめ、その周りの人達までも不幸に落とし込めた。
貴方の愛を独り占めしたくて。どうしても一番になりたくて。貴方だけが居てくれればそれだけで良かった。
それだけなのに。
「お母さん?」
「ん?どうしたの?」
小さな手を繋いで夕闇の中を歩く。それは途方もなく、行く場所なんてない。居場所はとうに消え去った。だから私は。
「大丈夫?」
「…何が?」
「おめめからおみずがでてる」
そう言って、小さな手はそっと私の頬を撫でていく。それは私をどうしようもない気持ちにさせる。
「っ、」
もう無理かもしれない。あなたを連れて行くのは。
「、お母さんのこと、好き?」
涙の止まらない顔を無理矢理笑顔にし私は小さなあなたにすがるように問い掛ける。
それにあなたは満面の笑みを浮かべて。
「うん!世界一大好き!」
そうだね。優しいあなたはきっとそう答える。だから私は、あなたを拐ったの。
【セーター】
手編みのセーターなんて渡したら、貴方は重いと感じてしまうかしら?
貴方と付き合い始めて初めての冬。
どうして貴方が私を好きになってくれたのか今になってもまだ解らないままだ。
貴方の周りにはいつもたくさんの人が集まってくる。私は対照的にいつも独り小説を読んでいるような女子生徒でしかなかった。
なのに貴方は気付けば私の傍に居て、一人っきりの私をいつも気に掛けてくれた。
…好きにならない訳がなかった。
だけど。
貴方が私を好きになるのは少し可笑しい。
だって容姿端麗、聖人賢者の貴方の側には私なんかよりずっと可愛くて綺麗な女の子達が我先にと群がって止まない。それなのに。
どうして私を選んだの先生?
「それはね、君が誰よりも綺麗だからだよ」
そう聞けば、先生はまるで内緒話をするように誰も居ない放課後の教室。そっと私に囁くのだ。
先生は青が好きだって言ってた。
だから私は空よりも海よりも夜に近い深い毛糸を選んだ。
「気に入ってくれるかな?」
先生にこれを渡した時を思い浮かべる。
きっと先生はあのエセ臭い笑みを浮かべ私に微笑んで言うだろう。
"ありがとう。とっても嬉しいよ"
「…」
何だか、スッゴく。胸の奥がムカついてきた。
だけど。
「好きになっちゃったんだもん。仕方ないよね?」
自分に言い聞かせるように、編みかけのセーターに微笑んだ。
「よし!ラストスパートだ。頑張るぞ!」
そう、自分を励まし編み物を再開した。今夜も徹夜になるだろう。だけど、大好きなあの人の笑顔を想像すると、いつもよりも編むのが楽しかった。