コノハ

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【セーター】

手編みのセーターなんて渡したら、貴方は重いと感じてしまうかしら?
貴方と付き合い始めて初めての冬。
どうして貴方が私を好きになってくれたのか今になってもまだ解らないままだ。

貴方の周りにはいつもたくさんの人が集まってくる。私は対照的にいつも独り小説を読んでいるような女子生徒でしかなかった。
なのに貴方は気付けば私の傍に居て、一人っきりの私をいつも気に掛けてくれた。
…好きにならない訳がなかった。
だけど。
貴方が私を好きになるのは少し可笑しい。
だって容姿端麗、聖人賢者の貴方の側には私なんかよりずっと可愛くて綺麗な女の子達が我先にと群がって止まない。それなのに。
どうして私を選んだの先生?

「それはね、君が誰よりも綺麗だからだよ」
そう聞けば、先生はまるで内緒話をするように誰も居ない放課後の教室。そっと私に囁くのだ。

先生は青が好きだって言ってた。
だから私は空よりも海よりも夜に近い深い毛糸を選んだ。
「気に入ってくれるかな?」
先生にこれを渡した時を思い浮かべる。
きっと先生はあのエセ臭い笑みを浮かべ私に微笑んで言うだろう。
"ありがとう。とっても嬉しいよ"

「…」
何だか、スッゴく。胸の奥がムカついてきた。
だけど。
「好きになっちゃったんだもん。仕方ないよね?」
自分に言い聞かせるように、編みかけのセーターに微笑んだ。
「よし!ラストスパートだ。頑張るぞ!」
そう、自分を励まし編み物を再開した。今夜も徹夜になるだろう。だけど、大好きなあの人の笑顔を想像すると、いつもよりも編むのが楽しかった。

11/24/2024, 12:16:54 PM