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3/12/2025, 4:30:42 PM

「 あ り が と 」



事件以降、後遺症で不自由な身体になり、うまく話せなくなった。対人恐怖症にもなり、お話を聞きたいと病室にしつこく来る警察をまだ話せる状態じゃないと毎日のように母が追い返していた。私はベッドの上で怯えていた。
ある日、私と同じ被害にあった人が事件のことを詳しく話したらしい。それからは話を聞きたいと病室に来る警察はほぼいなくなった。
その人の証言で犯人は逮捕され、時間が経つにつれ、ニュース番組も世間もこの事件を忘れていった。

結果、私は事件のことを警察に話すことなく、事件解決に至った。

のに、一人の男性刑事は毎日のように病室に来ていた。怯えている私に無理に話すこともなく、ただ顔を見てまた、と帰っていく。

少しずつ、この人なら信じられるかも、と思った。
正確には、信じて、裏切られてもいい、と思った。


その人は、後に刑事をやめ、行方はわからない。



うまく話せない、身体もうまく動かせないきみは一生懸命書いていた。

紙がずれ、見かねたオレは書きやすいように折った。


「 あ り が と 」



それが彼女との最後になった。最後にした。彼女を見届けたらオレは刑事をやめる。そう決めていた。この瞬間、刑事として彼女を見守る役目はやり遂げたと感じて彼女に伝えず、刑事をやめた。




八年後、オレはテラス席で新聞を読んでいた。まだ職業病が抜けていない。休日だからかそれなりに人はいたが、夕方になると流石に減ってくる。

向かいの服屋のショーケースの前に女子高生と母親らしき二人が立ち止まった。親子だろう。向かいと行ってもテラス席からはすぐだし、小さい服屋で男性向けの洋服を着ているマネキンを娘らしき制服姿の女の子が見つめていたから気になった。


『どうしたの?あ、こういう服の男性が好みなんだ、お母さんもね、昔はこんな彼氏いたのよ。あ、そうそうこれ、流行ったのよー、懐かしいわね』


マネキンを見つめ続ける女子高生


「どうしたの?あ、あなた緑好きだもんね、メンズだけどベルトすればあなたも着れるわよ」


マネキンを見つめ、静かに涙を流す女子高生


『愛?どうしちゃったのよ』



愛?…



「……むかしね、お世話になった刑事さんが、いっつもこんな服装だったんだ。絶対ズボンは緑でさ…思い出しちゃって」


『そう…だから緑が好きなのね。カバンのストラップも緑だもんね』


「…うん。落ち着くんだ。近くで見守っててくれてる気がしてさ……もう会えないけど」


「それに…わたしずっと親いなかったからさ、ここにくる前の名前、みどりだったんだ。…また会いたいな」




「 な ん ね ん た っ て も わ た し を み つ け た ら 」


「 こ え か け て ね 」


「 ぜ っ た い だ よ  や く そ く ね 」




歩きだすのと同時に、スクールバッグに付いている、

みどりいろのストラップが、こちらに

手を振るように揺れだした_______

2/20/2025, 6:24:02 PM

ただ、私は、病気がない人生を、生きてみたかった。

2/16/2025, 5:32:00 PM

病気じゃなかったら、恋がしたい。

病気じゃなかったら、恋も出来ただろうに。

身体が壊れてゆくのが怖い。

普通に生きたい。

生きれない。

残酷で理不尽で不平等な現実が運命だというのなら、

運命という言葉で片付けるのなら、

もう、生きていけない。なにも、しんじられない。

2/13/2025, 5:42:38 PM

「お母さん、ごめんなさい。私もう治らない」

親の知らないところで私はたくさん本を読んでインターネットで調べて闘病垢を作って話を聞いたり、
とにかく調べまくった。

医者は濁して言うからもう信用なんてしていないし濁して言うからまわりに期待させちゃっていたね。ごめんね。

面と向かって言うと泣きそうになるし泣かせたくなかったから紙にそう書いて部屋の前に置いた。

私はもう知っているよ。一生治らないこと。


その日から良くも悪くも吹っ切れた気がした。
どうでもいい。学校なんて行けてないしテストの結果だろうが進学だろうが就職だろうが、どうでもいい。

私には関係ない。私にはそんな未来はない。



病室の天井を眺めながら気付いた。
治らないって分かったから、置き手紙を書いたあの日から今日まで私は、死ぬ準備をしてきた。

死ぬ準備が出来たんだ。だから後悔していないよ。
変に希望持った方が現実見たときにつらいでしょ?
だから、私は絶望を知ることで幸せになれたんだよ。


だから、大丈夫。





一週間後、この前までここで生きていたとは思えない静けさの中、病室を去る準備をしていた。

『あ、もう行く時間だ』

慌てて荷物をまとめて立ち上がるとベッドの横の小さな棚に当たり、メモの切れ端が落ちた。





「私の分も生きて 幸せに生きて」




落ちるまでの時間が、とても長く感じた。


2/11/2025, 5:37:20 PM

もう、どうでもいいんだ。今さらだから。全てが。

病気って、なんで存在するのだろう。
どうして病気に選ばれたのだろう。
どうして一生治らないのだろう。
どうして諦めなけれはいけないのだろう。
どうしてみんなみたいに生きれないのだろう。

この世に、人間に平等なんてない。神様は不公平。
これを証明するためだけだったような人生で、。


健康だったら、今ごろどんな人生だったのだろうか。

この世に、人間に平等なんてない。神様は不公平。
これを証明するためだけに産まれたようなものだ。私の人生。


誰も幸せにならない。意味なんてない。


戦争より、いらないものだと思った_____

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