「お母さん、ごめんなさい。私もう治らない」
親の知らないところで私はたくさん本を読んでインターネットで調べて闘病垢を作って話を聞いたり、
とにかく調べまくった。
医者は濁して言うからもう信用なんてしていないし濁して言うからまわりに期待させちゃっていたね。ごめんね。
面と向かって言うと泣きそうになるし泣かせたくなかったから紙にそう書いて部屋の前に置いた。
私はもう知っているよ。一生治らないこと。
その日から良くも悪くも吹っ切れた気がした。
どうでもいい。学校なんて行けてないしテストの結果だろうが進学だろうが就職だろうが、どうでもいい。
私には関係ない。私にはそんな未来はない。
病室の天井を眺めながら気付いた。
治らないって分かったから、置き手紙を書いたあの日から今日まで私は、死ぬ準備をしてきた。
死ぬ準備が出来たんだ。だから後悔していないよ。
変に希望持った方が現実見たときにつらいでしょ?
だから、私は絶望を知ることで幸せになれたんだよ。
だから、大丈夫。
一週間後、この前までここで生きていたとは思えない静けさの中、病室を去る準備をしていた。
『あ、もう行く時間だ』
慌てて荷物をまとめて立ち上がるとベッドの横の小さな棚に当たり、メモの切れ端が落ちた。
「私の分も生きて 幸せに生きて」
落ちるまでの時間が、とても長く感じた。
2/13/2025, 5:42:38 PM