不貞行為を繰り返す夫と真面目な妻の間に産まれた
言葉も喋れない頃に母が姉を連れて逃げた
物心付いた頃には殴られた
✕ねばいい、✕ねばいいと何度も繰り返された
齢8にして父を✕した
正当防衛だった
✕すしか無かった
拾われたのだって面白そうだったから
でもそこで愛情を知ったし
温もりを知った
「今更どうしろって言うんだよ」
✕✕歳の少年
不貞行為を繰り返す夫と真面目な母の間に産まれた
毎日泣く母を慰め弟の世話をした
母が手を取り逃げる時
理解も出来ずに弟の身を案じた
案じるだけだった己に心を病んだ
心身壊れる母の背に心を病んだ
繰り返される入退院にまともなんて無かった
私は母も捨てた
仕方の無い事と諭すには心が弱かった
残った希望は貴方だけだった
私と一緒に普通の生活をしよう
「お願いだから分かってよ」
✕✕歳の少女
…
痛かった
苦しかった
辛かった
でも誰にも届かない
僕は成功作だから
耐えられる
耐えられてる
痛くないこと
苦しくないこと
辛くないこと
大丈夫
大丈夫
「…サイは平気です」
✕✕歳の少年
物心ついた頃から身体を開く事が当たり前だった
✕くても苦しくても辛くても
これが世のため人のため
出来ないのなら、耐えれないのなら処理対象と言われた
私は失敗作だった
どんなに泣いても喚いても私は処理対象
弟はそれを見てるだけ
✕くて怖くて✕くて怖くて
だから貴女に救われた時に
撫でられた時に涙が出たの
✕いは未だに分からないけど
辛いって苦しいって嫌だって
言っていいって言われたから
「私の名前はベルよ、ササはもう居ないわ」
✕✕歳の少女
…
この世がつまらなくて仕方が無かった
縛り付ける事にしか脳が無い大人が苛立つ
顔色ばかり窺う癖に影では嘲笑を肴にする子供に苛立つ
ニンゲンが嫌いで仕方が無かった
バケモノになりたかった
だがバケモノは思いの外大変で
ニンゲン離れも程々にすべきと感じた
避ける私を追い掛けて
興味本位で付き合って
ちゃんと教えてくれたから
私に君は不釣り合いだったのかもしれない
「よく聞こえる声で泣くなよ、ハニー。」
✕✕歳の少女
この世がつまらなくて仕方が無かった
求められるから熟して
頼まれるから受け入れる
バケモノだと言われても求められたからしてるだけ
ニンゲンとバケモノの差ってなんだろう
ニンゲンらしくないで言ったら君も俺も変わらない
機械のような自分はニンゲンらしくないらしい
ならニンゲンらしさを教えてよ
生物ってなに?
ちゃんと教えてくれたから
君しか居ないんだろうなって思い込んでた
「なんでアイツばっかり責められるんだよッ!!」
✕✕歳の少年
…
何処か心が空っぽだった
母は自分を産むと同時に亡くなった
父は仕事に明け暮れて家に居ない時の方が多かった
学校にも行けてたし友達だって居た
食事だってきちんと食べれてる
服だって毎日洗濯できるし着てるし
帰る家だってある
でも満たされなかった
周りはそれすらも感じさせない
楽しげに充実した普通を歩んでる
それに比べて自分は?
何がしたいんだろう、何を目指してるんだろう
何も出てこなかった
だから初めて見た美しさに惚れた
欲しいと思った
創りたいと思った
手に入れたいと思った
それ以外要らないとさえ思った
「俺っちにはコレしか無いんスよ」
✕✕歳の少年
優しい両親が居て
朝起きたら遅刻を仄めかされて
焦るのにも関わらず朝食だけはちゃっかり食べて
行ってきますと声に出して
授業ダルいなんて友達と笑い合って
オシャレなお弁当を頬張って
最近流行りのメイクで盛り上がって
疲れるのに楽しい部活を終わらせて
帰宅途中に出会う幼なじみに絡んで
家に帰って旅行の話でもしながら夕飯を食べて
スキンケアで長引く入浴を終えて
ベッドに飛び込みスマホを弄る
そんな普通がずっと続くと思ってた
貴方が美しさに惚れて普通から飛び出すまで
「たまには帰らないと…おじさん不安だと思うよ」
✕✕歳の少女
題名:すれ違い
作者:M氏
出演:🎗💜/🎲🔔/🌧☀️/📸🍤
【あとがき】
冷静に考えれば伝わる言葉とか
第三者目線に立てば納得出来る感情とか
人がすれ違う瞬間ってそれくらいくだらない事が多いですよね
M氏もそんな形で誰かとすれ違う事が多いです
誰かの意見に惑わされて交友を断ったり
言葉足らずな想いをネガティブに受け取って勝手に傷付いたり
きちんと落ち着いて話すだけで解決出来ちゃったりするんですよね
それが出来るのなら人間は苦労しないんでしょうけど
皆さんはすれ違ったな、アレは何とかできたなって思う経験ありますか?
すれ違いとは気付いた頃には手遅れになるものばかりですが
それが後悔になって自尊心を削り始める前に
腹を割って誰かと話すのは大事だと思ってます
ですが正直と歯に衣着せぬ物言いをイコールにするのはオススメ出来ませんよ
言葉は難しいので沢山考えましょう
向き合うってそういう事だと思います
澄んだ空気は触れるに少し肌寒く
呼吸を繰り返せば自ずと気道が冷える
苦しくなったら深く息を吸い
体内を巡りぬるくなった息を吐く
そうする事で冷静になれる
雲一つ無いような抜ける程晴天の今日
青く淡く広がる空は自分より背の高い建物で窮屈そうだ
天に居る両親も窮屈な想いはしていないだろうか
『鞠姉、お供え物ってチョコでも良いの?』
『パパもママも好きだったし良いんじゃない?』
姉と妹が選ぶ両親への贈り物は洋風なものばかりだ
和菓子が好きな自分とは対で両親は洋菓子を好んでいたなと
2人の会話で薄く思い出す
「じゃあちょっとお高いの買おうよ」
『幸くん無理しないで良いんだよ?』
「大丈夫、お金はあるから」
両親が亡くなって姉兄妹の3人で施設に行く
それを拒む為に学業を蹴り仕事に就いた
胸を張れるような仕事では無いが
お世話になった人も居るし、仲のいい人も居る
姉の夢を、妹の学業を応援出来る程の財もある
『じゃあゴヂバチョコにしよう!母の日に買ったらめっちゃ喜んでたから!』
「懐かし〜3人でお金出し合ったやつだ」
『皆でお茶会みたいになったよね、家族で食べよってさ』
幼い手で3人並んで
母の日だと店員に伝えて選んでた
今じゃ遠い思い出だ
「コレ好きじゃなかったっけ?」
『好きだったけど新商品も食べさせたいよね』
『分かる〜コレお酒入ってるって、おっとな〜』
「それは琴ちゃんが食べれないよ」
『法律的にはチョコに入ってるお酒はお酒の分類から外れるから行けるよ』
「そ、そういうものなの?」
『さっすが琴ちゃん!3姉兄妹で一番の秀才!』
「でも酔う子もいるよ?」
『いーいの!!』
両親の好きだったもの
新しく作られたもの
あの頃は買わなかった酒入りのもの
3人で選び言葉を重ねて受け取ったもの
線香と花を男の己が全て持つ
前を歩く2人の小さな背中を眺めながら
冷えた空気を含んでは吐く
上から見守る両親は
姉妹の為に手を汚す自分を見て泣いてるだろうか
口が裂けても白と言えない道を歩く自分を見て
呆れるだろうか
寺院墓地に足を踏み込み
本堂のお参りと住職の人に軽く挨拶を終えて
“夜桜家”と書かれたお墓に向かい
3人で並んで合掌を送る
『パパ、ママ。久しぶり』
『ウチらめっちゃ元気にしてるよ!』
「水持ってくるね」
『任せたお兄ちゃん!』
『荷物は持ってるよ』
「ありがとう」
レンタル出来るバケツを持って水を汲む
バケツの色と空の色が相まって透明な水が青く染まる
揺れる水面に映る自分と目が合い
少しばかり深く呼吸して
少しばかり強くなった風に背を押されるように2人と合流した
水をかけるのは姉である鞠がやり
柔い布で擦るのは自分がやる
その近くで両親に語るのは妹である琴
学校であった事、今習ってる事、友達の事…
それらを話終わる頃には掃除も終わり
手桶に綺麗な水を張って
打ち水をする役目を担う
花立には桃色の美女桜
水鉢には綺麗な水を
終わり次第買ってきたお供え物を並べていく
『そう!パパにね、コレをね…』
『鞠姉わざわざCDにしたの?』
「え!良いなぁー俺が欲しい」
『そりゃね!今じゃスマホでちょちょいのちょいだけどさ!天国にスマホって無さそうじゃん?2人にも家に帰ったらあげるよ!』
『音楽プレーヤーはあるの?』
「無さそうだけど…」
『細かい事は気にしない!』
姉は今こそ有名になってきたが
元は伸び悩んでいたバンドのギターボーカルだ
ギターを教えてくれたり
自分の歌声を褒めてくれたり
両親の優しい支えがあったからこそ
今も走り続けられるような夢を持てたのだろう
『どうかCDプレーヤーがありますようにー!』
『天国で和風ロックバンドガンガンに鳴らしてるパパとママ…んー…』
『次からはギター持ってくるか…』
「やめようね、周りの人が困っちゃうから…」
わちゃわちゃとした雑談も立てた線香に火をつければ収まる
手を合わせ、感謝と近況報告を心音で伝える
父さん、母さん
2人は俺が守るから
2人が幸せに生きられるように
安心して見守っていてください
『…さて、帰るかー!』
『ちゃんとお菓子忘れないようにね』
「帰ったらお茶会だね」
『うっまいお紅茶を淹れたりますわ!』
『鞠姉は料理下手だからやめときなよ』
「俺が淹れるから大丈夫だよ」
『幸くんの料理で舌が肥えてるだけだって!私は平均だよ!普通に出来るよ!』
『幸くんのが美味しいんだもん!』
『素直じゃないなぁ、愛しいお姉ちゃんお兄ちゃんの美味しい紅茶が飲みたいって言いなさいよ〜』
『言わない!』
雲一つ無い抜ける程の晴天に響く家族の声
少しばかり強かった風は今じゃ優しく3人の背を押す
世知辛くとも寒くとも
幸せは傍にある
いつもありがとう
無理しないでね
風に混ざる届かない声
題名:秋晴れ
作者:M氏
出演:夜桜家
【あとがき】
秋晴れ繋がりでとある創作と繋がってるものを
別れと言うのは突然やってきます
夏が終わって急に肌寒くなる秋のように
遺された人は辛く悲しく思う時もあるでしょう
ですがそれを支え合える人が居れば
視線は自ずと前を向くと思います
お盆でも無いこの時期に墓参り描写を書くと言う奇行をお見せしましたが
沈み過ぎずに、だからと言って浮かれ過ぎずに
出演してくれた3人の今を伝えられればと
そう思っています
補足ですがM氏は姉妹は居れどこんなに仲良くないですし墓参りもした事ありません
こんな姉兄妹居ない、墓の礼儀が成って無い、などと言ったものは暖かな目で見てください
アナタが振るう暴力
アナタが教えた温もり
アナタが放つ罵倒
アナタが与えた悲しみ
アナタが魅せ付けた憧れ
アナタが押し付けた束縛
アナタが刷り込んだ教訓
アナタが投げ付けた失望
アナタが付けた傷跡
アナタがくれた愛憎
アナタが感じさせた想い
アナタが見せた美しさ
アナタが覚えさせた欲望
アナタが学ばせた友愛
アナタが遺した恐怖
アナタが抱かせた不安
刻みつけたのは
紛れも無いアナタだ
題名:忘れたくても忘れられない
作者:M氏
出演:愛おしい私の子達
【あとがき】
忘れたくても忘れられないもの…出演してくれた子達の大半が辛い記憶とセットで持っていました
やはりパッと浮かぶのは辛い記憶ですね
忘れたくても簡単に忘れられなくて
時折感情が溢れて苦しくなります
忘れそうになった時に限って夢の中に出てきます
痛みも悲しみも苦しみも怒りも
ですが嬉しい事も少なからずあると思います
忘れてしまえたら楽になれる程に優しくて愛おしい記憶が
M氏は親から初めて貰ったゲームセンターでたまたま取れたぬいぐるみがソレですね
今になっては小さく感じるサイズ感ですが幼い手には大きくて柔らかくて…本当に嬉しかったんですよね
未だに貰ったぬいぐるみの質感を覚えていて今もその触り心地に近いものが好きです
なんならたまにA〇azonとかで探します(無いんですけどね)
やはり悲しい記憶が負けじと主張を始めますが…コレが忘れたくても忘れられない家族としての嬉しい思い出です
軽快な声が良く似合う
眩い笑顔が良く似合う
太陽のような貴方が
甘い香りが愛おしい
小さな手が愛おしい
大事にしたい貴方が
妖艶な声色が好き
暖かな温度が好き
愛したい貴方が
輝く瞳が美しい
優しい言葉が美しい
家族のような貴女が
題名:やわらかな光
作者:M氏
出演:🎗💜💎🕷
【あとがき】
根が闇属性なもので書くのに少々骨が折れました
己の中の光と言うのはどんなものでしょうか
出演してくれた子達はそれぞれ“恩人”“弟”“想い人”“大切な人”をあげてくれました
光に強弱はあれど当人にとっては全てやわらかくて愛しくて仕方の無い光だと思います
他にも光を抱く子は居ますが
生憎光とは何かから始まる子も居まして
全員を書くのは難しかったです
M氏の中にもあるのでしょうか
自分の事なのに自分が一番分かっていません
見てくださった方々はどうでしょうか
貴方の中にある光とはなんですか?
ふわふわの髪は雛鳥みたいで
もちもちの頬は大福みたいで
ふかふかの手は紅葉みたいで
くりくりの瞳は夜空みたいで
月が眩し過ぎる日の夜空みたいで
愛おしくて
愛おしくて
仕方が無い人
いつからこうなったんだろうね
いつから間違えちゃったんだろうね
私がもっと上手く動けてたら
仲良く笑えてたのかな
私がもっと上手く動けてたら
手を繋いだりとか出来たのかな
私がもっと上手く動けてたら
他愛無い会話を出来てたのかな
全部間違えちゃったのかな
手遅れなのかな
もう何も出来ないのかな
『オレはアンタと仲良しこよしする気は無いです』
私の居場所はもう無いのかな
『今更何を言ってんですか?』
普通の家族みたいに出来ないのかな
『アンタの普通とオレの普通は違います』
ふわふわのくせっ毛
柔らかそうな頬
大きくなった拳
黒く濁りきった…
「…また会えたら良いな…」
きちんと話したい
普通の家族じゃなくても良い
貴方が笑顔の姿を
少しだけ見せて欲しい
題名:鋭い眼差し
作者:M氏
出演:💜(🎗)
【あとがき】
戦闘シーンをカッコよく書きたいなって気持ちがありましたが少しばかり寂しげな創作になりましたね
家族と言うのは同じ時間を同じ気持ちで過ごして初めて相入れるものだとM氏は思います
出演してくれた彼女とその弟は大半の時間を別の場所で過ごしていました
長い年月で培った環境も思考も友愛も…全て違うものとして
例え一方が一方を想っていても届かなければ意味が無いですよね
伝わりませんよね
愛情も憎悪も全部同じなんです
時間の流れは誰かを救うものに成り得ますが
薬と同じで誰かを壊すのにも充分なんです
割り切らないといけませんね
割り切れるかは別ですが