ひんやりした感触を腿に受け、私は目を覚ます。
どうやら、雨が降るようだ。
ベンチで眠っていた私は、膝で眠る親友を起こそうとする。
後ろに結んだ彼女の髪はとても綺麗だ。
今もなお、日の光を浴びて輝いている。
そして気付く。
空は雲一つない快晴。
冷たい感触は今も広がり続けている。
まさか。
私の膝でうなされているとしたら、かなりショックだ。
私は彼女の顔を覗き込むと__
思いっきり頭を引っ叩いた。
「痛った」
彼女は頭を抑えながら足元に転がり込む。
私は無視してハンカチを取り出し、スカートの水溜りを拭き取る。
「何すんのよ」
憤る彼女だがそれは私のセリフだ。
「何すんのじゃないわよ。あんたのよだれで染みができちゃったじゃない。」
立ち上がった彼女はみるみる血の気が引いていく。
視線の先にはど真ん中だけ色が暗い私のスカートがある。これではまるで…
「お、おもらs__」
「そんなわけ無いでしょバカ!」
私たちの不毛な鬼ごっこは午後のチャイムまで終らなかった。
もしも未来を見れるなら
「大きくなったら何になりたい?」
突然、友人が聞く。昼間の授業で将来の夢について話していたのが原因だろう。
「別に…何も。」
私の将来は決まっている。5年後の火事で全てを失うのだ。私は生まれつき未来が見えるのだ。一度も外れたことはない。
友人は不満そうに顔をふくらませる。
「え〜。それじゃつまんないよ〜」
「じゃあ、未来がどうなるか決まってて、それが絶望しかないと知ってたら、どうする?」
思わず問いかけてしまった。
「その後どうするか考える」
ケロッと言ってのけた。
そういえば私は起こった未来をただ受ける入れるだけで、その後の事は考えたこともなかった。
無色の世界
「まずそう…」
午前の授業が終わり、弁当を開くとなんとも食欲のそそらないメニューだった。彩りがないのだ。定番の日の丸に卵焼き、唐揚げ、ほうれん草と人参のサラダ、ミニトマトとデザートにオレンジゼリーまで入っている。入っているのに、だ。トマトを摘みつつ、窓の外に目をやる。うっすらと灰色掛かった快晴の空だ。雲一つ存在していない。真っ白な太陽が世界を照らしている。
その日、世界から色が消えた。