NoName

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8/31/2023, 12:26:04 PM

「不完全な僕」

「お嬢様、お茶が入りました」
 猫舌な私でも飲みやすく、それでいてぬるいわけでもなく適度に温かい紅茶。何年も私に仕えてきた彼はいつも完璧に仕事をこなす。
 彼の完璧なところは仕事だけではない。身嗜みはもちろん、一つ一つの仕草や言葉遣い、そして周囲への気遣いに至るまで全て美しい。
 さらにその容姿に至るまで欠けることのない、神が私に遣わせた最高の従者だ。
 そんな彼にも、一つだけ似合わないものがある。
「貴方もいかがかしら?」
「ぼ、僕は大丈夫です」
 あれほどの美しい顔と声には似つかわしく、彼は自らを僕と呼ぶ。
 これでこそ愛おしい、私の不完全な僕(しもべ)だ。

8/29/2023, 1:38:10 PM

『言葉はいらない、ただ…』

「試合の時、脅迫されてた私はルール違反をした…」
「…」
「そのまま私は勝ってしまった…」
「…」
「本当にごめんなさい…」
「…」

「いらない」
「…え?」
「そんな言葉はいらない。ただ…」
「ただ…?」
「今すぐ私と勝負しなさい!正真正銘、正々堂々正面から!」
「…!うん!」

8/20/2023, 11:58:37 AM

さよならを言う前に

本当に、貴女を最期まで理解できなかった。
どれだけあしらっても
どれだけ突っぱねても
どれだけひどいことを言っても

貴女は何故か、私から離れなかった。
どうしてそんな風に笑っていられるの。

さよならを言う前にそれだけは教えて欲しかった。

8/4/2023, 2:35:37 PM

つまらないことでもちゃんと話してよ

4/21/2023, 1:28:12 PM

 ひんやりした感触を腿に受け、私は目を覚ます。
 どうやら、雨が降るようだ。
 ベンチで眠っていた私は、膝で眠る親友を起こそうとする。
 後ろに結んだ彼女の髪はとても綺麗だ。
 今もなお、日の光を浴びて輝いている。
 そして気付く。
 空は雲一つない快晴。
 冷たい感触は今も広がり続けている。
 まさか。
 私の膝でうなされているとしたら、かなりショックだ。
 私は彼女の顔を覗き込むと__
 思いっきり頭を引っ叩いた。
「痛った」
 彼女は頭を抑えながら足元に転がり込む。
 私は無視してハンカチを取り出し、スカートの水溜りを拭き取る。
「何すんのよ」
 憤る彼女だがそれは私のセリフだ。
「何すんのじゃないわよ。あんたのよだれで染みができちゃったじゃない。」
 立ち上がった彼女はみるみる血の気が引いていく。
 視線の先にはど真ん中だけ色が暗い私のスカートがある。これではまるで…
「お、おもらs__」
「そんなわけ無いでしょバカ!」
 私たちの不毛な鬼ごっこは午後のチャイムまで終らなかった。

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